中国の全国人民代表大会(全人代)が5日、北京で開幕した。温家宝首相が読み上げる政府活動報告(中国語では「政府工作報告」と記され、施政方針演説に相当する)は初日のハイライトだ。多くの数値目標が挙げられているが、中国国内での各種報道を参考に、10のキーナンバーを解説する。すると、中国経済がどこに向かうのか、読み解ける。
「積極」から「抑制」へ
(1) 7.5% 成長率
中国政府は2005年に実質GDP(国内総生産)成長率の目標をそれまでの7%から8%に引き上げた。その後8%に据え置いてきたが、8年ぶりに数値を下げた。
これは何を意味するのか。穏当に考えれば「農村からの人口移動がピークを過ぎつつあり、無理に高成長を維持する妥当性がなくなった」(岡三証券の塩川克史・上海駐在員事務所首席代表)ということだろう。リーマンショック後に打ち出した4兆元(約48兆円)の景気対策は、不動産価格の高騰やインフレといった副作用も大きかった。今後は、無理な景気浮揚を図らないというメッセージが込められているようだ。
(2)8000億元 財政赤字
これは財政赤字の計画値。2011年に続き2年連続の縮小になる。中国の国債発行残高のGDP比は20%に満たない水準。しかし、地方政府が抱える債務などを考えると、広義の政府債務の水準は公表数字よりも悪いというのが大方の見方だ。
政府が「積極的な財政政策」をうたいながらも赤字額を絞っているのは、欧州危機が影響しているようだ。野放図な財政拡大が国家経済を窮地に追い込むことが現実となり、危機を回避したいとの意図が透けて見える。
(3) 4% 物価上昇率
消費者物価の上昇率を4%前後に抑えるとの目標も提示した。2011年通年のインフレ率は5.4%だったので、1ポイント以上も引き下げることを意味する。上記のように成長率目標を引き下げていることを考え合わせると、物価を重視する姿勢をより強めていることが伺える。
一方、活動報告では「輸入型のインフレ要因や生産コスト増大の影響と住民が受け入れられる度合いを総合的に考慮」したとしている。現時点では、人民元の大幅な切り上げによる輸入物価のコントロールや、人件費の抑制には消極的と見て良さそうだ。