東日本大震災:避難所の食事、栄養に問題

2012年3月6日 2時30分

 東日本大震災の避難所で提供された食事は、地震発生から1カ月を経過しても1日平均の摂取エネルギーが1631キロカロリーと、成人男性に必要な量(2500~3050キロカロリー)の半分程度にとどまっていたことが分かった。支援物資や炊き出しが始まっても十分な食事が提供されなかっただけでなく、栄養の偏りも目立った。調査した栄養士は、避難所での栄養管理の必要性を指摘している。

 山形徳洲会病院(山形市)の管理栄養士でNPO法人「TMAT」の、鑓水(やりみず)弘樹さんらのチームが、昨年3月18日~5月1日の45日間に宮城県南三陸町の避難所「ベイサイドアリーナ」で提供された食事の記録から、栄養価を計算した。期間中で最もエネルギーが低かったのは3月25~31日で、1日あたりの摂取量は1469キロカロリー。全期間の平均では同1643キロカロリーだった。

 最初の1カ月間は、エネルギーのほとんどを炭水化物に頼り、脂質やたんぱく質が不足。鉄や亜鉛、カリウムなどのミネラルも男女ほぼ全年代で基準値を下回った。一方で、塩分は男女ともに一貫して基準値(男性1日あたり9グラム、女性同7.5グラム)を超えており、高血圧など食事制限が必要な被災者への配慮はほとんどなかったことがうかがえる。

 チームによると、時間の経過とともにボランティアによる炊き出しなどが増えてエネルギー量は増えたが、栄養分が偏った。鑓水さんは「何でも食べられる人が対象の炊き出しが多かったが、被災地には飲み込む力が低下したり、食事制限が必要な高齢者も多い。今後の災害支援で配慮が求められる。また備蓄食品にはミネラルやビタミンなどの栄養補助食品を加えることが有効だ」と話す。【久野華代】

◇南三陸町の避難所で提供された食事の一例◇

3月18日

朝=おにぎり、しそ巻き、おから、めかぶ

昼=パン、バナナ(2分の1本)

夕=おにぎり、塩辛、きゅうりの漬物、煮干し

  甘露煮

3月27日

朝=おにぎり、いかこうじ漬け、オレンジゼリー

昼=ジャムサンド、ドーナツ、牛乳

夕=おにぎり、煮卵、シイタケ甘煮、生野菜、カップ麺

4月14日

朝=ジャムサンド、リンゴ(4分の1)

昼=ちゃんこ鍋(炊き出し)、おにぎり

夕=ごはん、漬物、野菜炒め、なめこ汁

4月20日

朝=ジャムサンド、むき甘ぐり、牛乳

昼=ラーメン(炊き出し)、おにぎり、浅漬け

夕=ごはん、カレー、福神漬け

4月27日

朝=おにぎり、しそ昆布、梅干し、チキン

昼=まぐろ丼(炊き出し)

夕=ご飯、おでん、漬物

4月29日

朝=おにぎり、しそ昆布、サンマショウガ焼き

昼=菓子パン、一口ケーキ、牛乳、リンゴ(4分の1)

夕=おにぎり、ほうれん草のマーボーあえ、地

  鶏の炭火焼き(レトルト)

4月30日

朝=ジャムサンド、ささみくん製、牛乳

昼=うどん(炊き出し)、プチトマト

夕=とり鍋(炊き出し)、から揚げ、炊き込み

  ご飯、ウインナー、駄菓子

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