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2012年3月6日(火)付

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プーチン氏当選―涙にひたる余裕はない

「ロシアに栄光あれ」こう叫んで、ロシアのプーチン首相は涙を流した。4年ぶり、通算3期目の大統領復帰を決めて感極まった。与党「統一ロシア」は、昨年暮[記事全文]

中国経済成長―「7.5%」を歓迎する

格差や腐敗、環境破壊という負の副産物をまき散らしながら高度成長してきた中国。それがようやく、社会の安定を重視する成長へと転換をめざすことになった。歓迎したい。中国の全国[記事全文]

プーチン氏当選―涙にひたる余裕はない

 「ロシアに栄光あれ」

 こう叫んで、ロシアのプーチン首相は涙を流した。4年ぶり、通算3期目の大統領復帰を決めて感極まった。

 与党「統一ロシア」は、昨年暮れの下院選での不正を厳しく批判されてきた。プーチン氏も度重なる反政権派の大集会という逆風にさらされてきた。それだけに、今回の勝利がうれしかったのだろう。

 だが、5月の大統領就任を前に、難題が山積みだ。涙にひたる余裕はない。

 まず、足元が万全ではない。得票率は04年大統領選の71%超から、7ポイントあまり落ちた。

 特徴的なのは首都モスクワなど大都市の多くで、50%を割り込んだことだ。

 大都市やその周辺には、プーチン氏のもとでの経済成長で生まれた中間層が多く住む。ところが、この中間層が、選挙の不正や汚職・腐敗が深刻化する現状に不満を強めている。

 経済的な恩恵が届かず、産業の停滞や人口流出が続く北西部や極東、シベリアでも、支持がはっきりと低落している。

 こうした世論の傾向を、プーチン氏は改めて、みずからへの警告ととらえるべきだ。

 選挙戦では、政治の民主化、汚職・腐敗対策の強化、石油や天然ガスに強く依存する経済の現代化などを訴えた。しかし、これらは首相時代も含めて実質12年の長期政権の間、ほとんど実現できずにきた難題だ。

 これからも、言葉だけにとどまるなら、さらなる支持の落ち込みは避けられない。

 今回の選挙でも、反政権派は投開票での大がかりな不正があったと指摘し、糾弾のための集会を続ける構えだ。

 これに、プーチン氏はどう応じるのか。これまでのような実質的に対話を拒む姿勢は、とるべきでない。民主化や経済改革を進めるには、反政権派とも対話をすすめ、社会の安定を図る必要がある。

 選挙では、愛国心を刺激するかのように、ミサイル防衛や、流血の弾圧が続くシリア問題などで反欧米的な強硬発言を繰り返してきた。だが欧米との関係悪化は、経済をはじめ、ロシア自身に悪影響が及ぶ。世界の懸案の解決に資する方向で、対外政策を見直すべきだ。

 プーチン氏は欧州と同時にアジア太平洋も重視する「ユーラシア主義者」である。朝日新聞主筆などとの会見で、北方領土問題の「最終解決」に意欲を示したのも、その表れだ。

 日本政府も前向きに対応していくべきだ。

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中国経済成長―「7.5%」を歓迎する

 格差や腐敗、環境破壊という負の副産物をまき散らしながら高度成長してきた中国。それがようやく、社会の安定を重視する成長へと転換をめざすことになった。歓迎したい。

 中国の全国人民代表大会(全人代)が5日、北京で始まった。温家宝(ウェン・チアパオ)首相は、12年の経済成長率目標を7.5%とすると表明し、05年から7年続けて掲げてきた「8%前後の成長」の旗を取り換えた。

 温首相は成長目標を下げた理由として「長期にわたって一層高水準で、より良質な発展につなげるためである」と述べた。

 胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席と温首相が率いる「胡温体制」は、今年秋の共産党大会と来春の全人代を経て、次の体制と交代する。今年の全人代は、総仕上げの政策を決める場となった。

 中国の経済規模は現体制の約10年間で、4倍に急拡大した。しかし、その一方で、貧富の格差の拡大や不動産バブル、環境の悪化などを招いた。

 米国金融危機の影響を避けるために始めた景気刺激策は、必ずしも必要ではない公共工事ラッシュを招き、今は地方政府の不良債権となっている。

 そういったゆがみを正すために、温首相は輸出入の伸び率の目標を昨年の2割超から「10%程度」に下げると明言した。

 そして、人々の収入増で消費を拡大し内需主導の成長をめざすため、経済成長率と同じペースで1人あたりの収入を増やす方針を確認した。

 いずれも、いびつな高成長路線から抜け出す策として評価できる。ただし、中国のひずみは成長政策だけが原因ではない。

 たとえば、当局が管理する人民元相場である。

 欧米からは切り上げを求める声が相次ぐが、温首相は「管理変動相場制の柔軟性を強める」と述べるにとどまった。

 人民元安は輸出依存を強めかねないし、資金があふれ資産バブルの恐れも増す。はじけて最大の被害を受けるのは中国であることを忘れてはならない。

 一方で、幹部が工事の入札などの経済活動に介入する例があとを絶たない。

 温首相は取り締まりを強めると表明したが、それだけでは足りない。背景には党がすべてを決めるという政治体制があり、その改革が急がれる。

 成長目標を下げたことで、日本など関係の深い国の経済に悪影響を与えるのでは、という心配もあるだろう。しかし、中国社会が安定した成長を続けることが、長期的には国際経済に好影響を与えるはずである。

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