最近、なぜかフィギュアスケート関連の本ばかり読んでいます。
「フィギュアスケートに懸ける人々」(宇都宮直子)
「フィギュアスケート 美のテクニック」(樋口豊)
「素直な心が才能を伸ばす」(山田満知子)
「氷上の光と影」(田村明子)
「キス・アンド・クライ」(ニコライ・モロゾフ)
「氷上の美しき戦士たち」(田村明子)
「Be Soul」(橋大輔)
「君なら跳べる」(佐藤信夫・佐藤久美子)
「フィギュアスケート王国 ロシア」
「寝てもさめてもフィギュアスケート」
「氷上のアーティストたち」(八木沼純子)
あんまり一つのジャンルを連続的に読みすぎて、どの本に何が書いてあったか頭の中が混乱していますが(笑)、フィギュアスケートを技術、歴史、文化、選手、コーチ、家族や海外事情など、いろいろな観点から読むことができて面白かったですね。
そしてこういう本を読むとよく出てくるのが、「○○年の△△オリンピック(または世界選手権など)の××選手のショートプログラム(またはフリー)がすばらしい!」というコメントです。
今はYou Tubeなどの動画サイトがありますから、こういう過去の「お宝映像」もけっこうたやすく観ることができます(この点は「便利な世の中になったもんだ」と素直に思います)。
私自身「我が心の最高演技」をいくつか持っていますが、これらの本に出てくる「伝説の名演技」を含めていろいろ観たくなり、動画サイトを観あさりました。
・ジャネット・リン:1972札幌五輪・女子シングルFS
・トービル&ディーン「ボレロ」:1984サラエボ五輪・アイスダンスFS
・カタリナ・ビット:1988カルガリー五輪・女子シングルSP&FS
・デビ・トーマス:1988カルガリー五輪・女子シングルSP
・伊藤みどり:1988カルガリー五輪・女子シングルSP&FS
・伊藤みどり:1989パリ世界選手権・女子シングルFS
・伊藤みどり:1992アルベールビル五輪・女子シングルFS
・フィリップ・キャンデロロ「ゴッドファーザー」:1994リレハンメル五輪・男子シングルFS
・フィリップ・キャンデロロ「ダルタニアン」:1998長野五輪・男子シングルFS
・イリヤ・クーリック「ラプソディ・イン・ブルー」:1998長野五輪・男子シングルFS
・アレクセイ・ヤグディン:2002ソルトレイクシティ五輪・男子シングルSP&FS
・荒川静香「トゥーランドット」:2004ドルトムント世界選手権・女子シングルFS
・エフゲニー・プルシェンコ「ゴッドファーザー」:2006トリノ五輪・男子シングルFS
などなど。
(ついでにプルシェンコのかの有名なエキシビションナンバー「セックス・ボム」も観ました 笑)
いずれもフィギュア史上に残る伝説の名演技ばかりですが、今回「目からウロコ」の思いをさせられたのが、同じ演技を海外の映像と解説でも観たことでした。
とりわけ面白かったのが、1988年カルガリー五輪での伊藤みどりのSPとFSです。日本の映像(NHK)はかつてビデオに撮っていて数え切れないほど繰り返し観ましたが、今回初めてアメリカのABCの映像で観ました。しかもフリーでは実況や解説に日本語の字幕がついていて、当時世界が彼女をどう見ていたのかがよくわかるのです。
(ちなみに解説は、ペギー・フレミング(1968グルノーブル五輪女子シングル金、1966〜1968世界選手権3連覇)とディック・バトン(1948サンモリッツ五輪・1952オスロ五輪男子シングル連覇、1948〜1952世界選手権5連覇)という豪華な顔ぶれです)
すでにショートプログラムですばらしい演技を見せていますので、解説陣も観客も注目度が高いです。
まず演技の冒頭のレイバックスピンをフレミングが「きれいなスピンです。スピードもある」。続く3ルッツは、その高さでアナウンサーや解説陣を驚嘆させます。そのあとの3フリップ、2アクセル・3サルコウのシークエンスあたりからは、ABCの3人とも押し黙って見つめるだけになります。
演技中盤のスローパートに入ったところで、バトンが「このプログラムはアスレティズムの勝利だ」「スポーツと技芸の戦いがフィギュアスケートなら、このプログラムでは肉体の競技性、アスレティック性が勝つ」。フレミングも「彼女はカリスマ性があり、観客を引き込んでいる」。この後も3ループ、3トゥループ・3トゥループのコンビネーションがきれいに決まり、そのたびに場内が大きく沸き、ABCの3人はただ見つめ、感嘆のため息をもらすだけです。
演技終盤、バトンは「規定が廃止されれば伊藤の順位は飛躍するだろう」「このアスレティックなプログラムは、スポーツでは真っ先に評価されるべき点だ」。と語る先で鮮やかなフライング・シットスピン。「今の動きを見ましたか? 今大会では誰もやっていない!」
そしてエンディング、最後のジャンプ・2アクセルを決めると、伊藤はガッツポーズをしながらスピン。ABCの3人は声を上げて笑います。観客は最後のスピンが終わる前から立ち上がり、満場のスタンディングオベーション。サドルドームは興奮の坩堝と化しました。
そして得点。Technical Merit(技術点)は、9人のジャッジのうち7人までが5.9をつける圧巻の高得点です。一方Artistic Impression(芸術点)は5.5〜5.7とやや低め。しかし当時の彼女の表現力からすれば、これでもよく点が出た方だといえるでしょう。
(私もこの演技は何度もビデオで観て、芸術点が低いという印象をずっと持っていましたが、改めて見ると、まず技術点がべらぼうに高いので、それと比べれば低く見えるのは当たり前ですし、第一5.5〜5.7ならそれほど低くもないじゃないか、と改めて思いました。ABCの実況でも「アスレティックなプログラムで5.5〜5.7なら悪くない」と評しています)
最後にバトンが言います。「今日最新のフィギュアスケートで第一に評価すべき点は、『スピード』と『パワー』なのです。この少女が有り余るほど持っているものです」「もっと滑り込めば、もっと技芸的で創造的な選手になれる。それは時間の問題だ」
さすが元世界王者、フィギュアスケートがかつての芸術性の時代からスポーツ・アスリートの時代になること、そして伊藤みどりがその先鞭をつけることを、この時点で見通していたのです。
それにしても改めて気づき、驚かされたのは、この演技が最終グループで行ったものではないということです。コンパルソリー(規定)とSPを終えて8位だった伊藤は、第3グループ(最終グループの前)での滑走なのです。当時の採点法では、ジャッジはすべての選手に違う順位をつけねばならないルールになっていました(技術点・芸術点を合算した総合評点が同点の場合は、芸術点が高い方が上位となります)。有力選手が集まる最終グループではハイレベルの演技が予想されるので、ジャッジはそれに備えて高い評点を「とっておきます」。このため、滑走順が早いほど高い点はつきにくくなるのです。
にもかかわらず伊藤は、SPでもRequired Elements(要素点)で5.7〜5.8の高得点を並べ(NHK解説の五十嵐文男氏は「第3グループの第2滑走で、こんな得点は普通出ないですよ。すばらしいですね」と絶賛しました)、そしてこのFSでは、Technical Meritで最終グループでも取れないであろう空前の高得点を叩き出しました。技術レベルの圧倒的な高さが、9人のジャッジをKOしたのです。
もう20年以上も前の演技なのに、今観てもまったく色あせていません。それどころか、あんなに高くてランディングのきれいなジャンプは、その後もお目にかかっていません。浅田真央や安藤美姫でも、あんなに高くは跳べません。
(一言で言えば、他の選手は「跳ぶ」、伊藤みどりは「跳ね上がる」ジャンプなのです)
「本当に『史上最高のジャンパー』だったんだな」と、改めて思わされました。
フィギュアスケートのような、日本ではそれほどではなくても(今はブームが来ていますが、伊藤のころはまだそれほどではありませんでした)世界では大きな注目を浴びるスポーツの場合は、選手も国内よりも海外での方が高く評価されることが多いですが、このABCの映像はそれを示してくれました。スポーツマニアを自認する私も、もっと「外の目」を知り、日本選手にとどまらずあらゆる選手、あらゆるスポーツを、大きな視野から眺め、見つめる目を持ちたい。こう改めて思わされた「お宝映像」でした。
はじめまして。 (*^_^*)
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