このニュースに関連した操作メニュー
坂本龍一 必然性こそが競争力、オリジナリティー
2012/02/25 20:17更新
この記事に関連するフォト・情報
記事本文
【いま、僕が思うこと】
今月、ドイツで開かれたベルリン国際映画祭に行ってきました。ここの関連事業に映画制作全般の講義があり、ぼくは音楽部門の講師を担当しました。
音楽部門では、次代の映画音楽作曲家を発掘・育成するコンペティションがあり、55の応募から選ばれた3人の作曲家に個別に感想やサゼスチョンを与えるなど、講義をしました。
関連記事
記事本文の続き そのほか、500人ぐらいの劇場で、映画音楽を制作する上でのプロセスなどを公開しました。
さて今回、コンペで選ばれた3人は、フランス、イタリア、ドイツの出身者でした。印象としては予想していたより技術的に良い出来でしたね。
例えば、オーケストレーション(楽器の使い分け方)や一つのテーマを変奏することなど、こちらも感心するところがあったぐらい。同時に、技術的にはみな優れているけれどそれ以上ではない、とも感じました。
改めて、ぼくが世界で活動するようになった背景を振り返ってみますと、自分自身は特に日本的・アジア的な要素を前面に押し出すのではなく、むしろ気をつけて控えめにしてきたつもりですが、それでも欧米人の耳にはオリエンタルに聴こえるようでした。
代表的なのは「戦場のメリークリスマス」でしょうね。「ラストエンペラー」や「リトル・ブッダ」などは題材がアジアに関係していますから、意図してそう作っていますので。
若い時はオリエンタルに聴こえるといわれることが嫌でしかたなかったけれども、今はそういうもんだと割り切っています。むしろ彼らにはない面を自分がもっていることは、大きな財産だとも思うようになりました。
つまりは、欧米人と同じようなことをわざわざ日本人がやっても意味がないということなんでしょう。もうすでに欧米で何億人もの人が体験しているわけですから。
日本人がやっている、という必然性がどこかに感じられないと。言ってみればそれが本当の競争力ですし、オリジナリティーですよね。日本でしか作れないもの、日本人でしかできない発想、そういうものが欧米から見て面白いわけです。
ベルリン国際映画祭での人材育成事業は今回で10回目とのことですが、日本でもおなじような取り組みがなされ、定着することを願っています。
◇
「タレントキャンパス」開催
「第62回ベルリン国際映画祭」(9~19日)の関連事業で、映画制作全般の人材を育成する「タレントキャンパス」において、坂本龍一さんが講師を務めた音楽部門は11~16日開催。コンペティションで選ばれた3人の若手作曲家は、オーケストラとのレコーディングなどを行った。坂本さんを含まない複数の審査員によって選考され、ドイツ出身のクリストフ・フライシュマンさんが表彰された。 ◇
さかもと・りゅういち 1952年東京生まれ。東京芸大大学院修了。78年、YMOに参加。88年、映画「ラストエンペラー」で米アカデミー賞作曲賞など受賞。2006年、エイベックスグループとレーベル「commmons」を共同で設立した。09年、仏政府から芸術文化勲章「オフィシエ」受勲。環境・平和問題にも言及。米ニューヨーク州在住。
広告
話題のニュース
ニュース記事ランキングの一覧
タイトル | 更新日付 | 補足情報 |
---|---|---|
「職員採用後のいれずみ狂っている」 橋下市長… | 03/05 12:22 | |
投票所で裸の女性たちがプーチン氏批判 露大統… | 03/04 22:41 | |
今井は屈辱の42位「自分が弱いだけ」 | 03/04 18:42 | |
堀端「寒さに負けた」 給水ミス悔やむ | 03/04 19:03 | |
大麻にニラ…栃木の隠れた日本一 | 03/04 19:34 | |
快走の秘密は「アメ」 青学大の出岐 | 03/04 19:35 | |
場当たりと迷走の果て…「原発ゼロ」危機 | 03/04 09:12 |