イチロー　オープン戦初戦で美技　３番デビュー、バットは２タコ

　【ピオリア（米アリゾナ州）穐村賢、ＡＫＩ猪瀬】新打順の３番と美技で復権の２０１２年の幕開けだ！！　マリナーズのイチロー外野手（３８）は３日（日本時間４日）、アスレチックス戦に「３番右翼」でオープン戦初出場。２打数無安打２三振１四球と快音は響かなかったが、守備では右翼後方に上がった大飛球を好判断でランニングキャッチし観客を沸かせた。なお、マイナー契約でキャンプに参加している川崎宗則内野手（３０）は出場しなかった。

　幾多の修羅場をくぐり抜けた男にとっても、オープン戦初戦は特別なものだった。昨季までの定位置１番から、新打順３番に移った試合。２打数２三振とバットは沈黙したが、復権を期するシーズンの“第一歩”に５１番が充実感を漂わせた。「３番がどうとかじゃなく、最初のゲームは緊張する。異常なくらいの緊張。それくらい慣れない。（今日は）いくつかあるスタートのひとつ」

　動きは３８歳とは思えぬ俊敏そのものだった。４回、ドナルドソンの打った右翼後方への大飛球にすばやく反応。一気に背走すると、最短距離で落下地点へたどり着く。最後は逆シングルでグラブを差し出す華麗なランニングキャッチだ。「捕る予定は全然なかったですから。抜けたわ…と思って。とりあえず行ってみようと思ったら、あっ、（グラブに打球が）入ったって。たまにあることです」。イチローらしい言い回しで、淡々と振り返った。昨季は２００安打とともに、新人時代から１０年続けたゴールドグラブ賞も逃した屈辱のシーズン。最初の打球処理で見せた美技は、まさしくイチローの今季にかける意気込みを感じさせるプレーだった。

　そんなイチローに対してピオリアのマリナーズファンも、あくまで“主役”として迎えた。守備に就く際には、人一倍大きな声援を受け「『おっ〜』と思いました。このニュアンスが伝わらないのつらいですね」とほおを緩めるなど、その期待の大きさを肌で感じた様子だ。今季は５年９０００万ドル（７２億円）で結んだ大型契約の最終年。新打順の３番で再び２００安打を放ち、ゴールドグラブ賞も奪還すれば、おのずと契約延長も見えてくるに違いない。　（穐村賢）