この時期、最盛期を迎えるはずの養殖用のウナギの稚魚(シラスウナギ)の不漁が続いている。原因は不明だが、3年連続で不漁になる可能性が高く、漁業関係者らは「これまでになく最悪の状況」と頭を抱える。品薄になったシラスウナギの取引価格は昨年の2~3倍に急騰。養殖ウナギの卸値も上昇して、大幅な値上げを検討するウナギ料理店や、廃業に追い込まれるウナギの加工業者も出るなど深刻な影響が出ている。【山本健太】
シラスウナギ漁の漁期は毎年12~4月。県内の主な漁場は、吉野川(徳島市)や那賀川(阿南市)の河口付近だが、今年は1月に入ってもほとんど捕れない状況という。ある漁師は「今年はさっぱり。燃料費だけがかかる」と肩を落とす。
県水産課漁業調整室によると、08年度に1720キロだったシラスウナギの漁獲量(推定)は、09、10年度がいずれも710キロと半分以下に減少。年度によってばらつきはあるが、過去10年間で最多だった05年度の5660キロに比べると激減ぶりが分かる。今年は更に減る見通しという。
不漁を受け、シラスウナギの価格は高騰。県内の漁協などによると、昨年は1キロ当たり70万~100万円だったのが、今年は150万~250万円という。
養殖業者らでつくる日本養鰻(ようまん)漁業協同組合連合会(静岡県)に加盟するJA東とくしま平島支所(阿南市)によると、数年前まで5000匹当たり20~30万円で取引されていたが、今年は200万円を超えている。高値でも売れるところには売れるが、困っているのが養殖ウナギを仕入れているウナギ加工業者で、既に閉鎖する加工業者も出始めているという。
ある徳島市内のウナギ料理専門店では、今月中旬に大幅な値上げを検討中。値段を維持したくても、仕入れ価格の上昇が落ち着きを見せないためだ。男性店主(53)は「なぜ、こんなにひどい相場になるのか。毎日の仕入れ時に、値が上がっていないことを願うばかり」と頭を抱える。
稚魚であるシラスウナギからウナギに生育するまでには半年以上かかることから、大きな影響が危惧されるのが家庭でも食されることの多い7月の「土用の丑の日」の時期。品薄になるのは避けられないとみられている。この男性店主は「不漁が続けば、ウナギ料理を出すことも難しくなるかもしれない。先行きが見えずどうしたらいいのか……」と不安を隠しきれない様子で話した。
2012年3月5日
岩手県・宮城県に残る災害廃棄物の現状とそこで暮らす人々のいまを伝える写真展を開催中。