岩手県知事:消費増税は被災地に負担、復興に集中を-インタビュー
2月22日(ブルームバーグ):岩手県の達増拓也知事は、野田佳彦首相が3月中の法案提出を表明している消費税増税は同県など東日本大震災の被災地に負担を掛けるものとして復興に悪影響が及ぶ可能性に懸念を示している。増税よりも震災からの復興に集中的に対応する方針を掲げることが政治への信頼回復につながるとの考えからだ。
達増氏は20日、盛岡市の岩手県庁で3月11日の震災発災1年を前にブルームバーグ・ニュースなどとのインタビューに応じた。消費増税について「経済を減速させるようなことがあってはならないし、被災地に負担が掛かるような形になっては復興もおぼつかなくなる」と反対する姿勢を鮮明にさせた。
政府・与党に対しては、「政治の信頼回復に向けては復興の旗を高く掲げることが一番効く」と復興に集中的に取り組むよう求めた。
大震災と津波により、死者4670人、行方不明者1313人、建物倒壊数2万4746棟の被害(2月21日現在、県総合防災室発表)を受けた岩手県。達増氏は菅直人前政権の復興構想会議(五百旗頭真議長)では被災地の知事として復興財源ねん出のための増税には慎重な意見を唱えていた。
「日本経済が強い状態で、一定の成長をしていく中で、復興は推進されるべきだ」と訴える。達増氏には、消費税増税やTPP(環太平洋連携協定)協議への参加を推進している野田政権の姿勢は、自民党の小泉純一郎元首相の「構造改革路線」に即したもので同党への「抱きつき戦法」に見えるという。
復興
47歳の達増氏は外務官僚から政界に転じ、議員時代は岩手4区選出の小沢一郎民主党元代表が率いていた旧新進党、旧自由党を経て民主党に合流。4期目にあった衆院議員の職を辞して2007年4月の知事選に出馬し、初当選。震災を受けて延期された昨年9月の知事選で再選を果たした。
政府の復興への取り組みについては「基本方針や、各省庁ごとの事業計画や工程表はあるがオールジャパンの復興計画はない」と指摘。復興庁の発足が2月にずれ込んだことについても「もっと早くてもよかったと思う」と語った。
岩手県は11年度から18年度までの8年間を対象とした「東日本大震災津波復興計画」を策定。「防災のまちづくり」、「交通ネットワーク」、「生活・雇用」など10分野で復興に取り組む方針を示している。
計画期間後の岩手県の姿については「震災発生のころよりも先に、未来に向かって進んでいるようでないとだめだ。その時の日本の経済とか世界の経済の中できちんと名誉ある役割を持てるような岩手、三陸が達成されていればいい」と思い描く。
特区
政府の復興対策の目玉である復興特別区域制度(復興特区)。岩手県は医師の配置基準を緩和することなどを柱とした「保健・医療・福祉復興推進計画」の認定を受けた。法人税の減免などで産業集積や雇用確保を目指す「産業再生復興推進計画」も申請しており、達増氏は「近々、認定されると思っている」との見通しを示した。
企業誘致関係では、宮城県が既に「復興推進計画(民間投資促進特区)」の認定を受けている。達増氏は被災地間の競争になるとの見方について「対立の意味ではなく、基本的に力を合わせ、助け合い、やっていくのが復興のためにもいい」と語った。
政府
震災直後の政府の対応について「スピード感があったとは言えないし、ガソリン不足など政府としての指導力、調整力が求められる所でうまくいかなかった」と分析。菅直人前首相ら首相官邸は東京電力福島第一原子力発電所事故への対応で「大部分が東京電力の一部になったような格好になり、大震災の全貌をつかみ損ねた所がある」と指摘した。
原発事故と放射性物質による汚染の問題でも「安全基準は厚生労働省、農林水産業関係は農林水産省、放射能や環境問題は環境省と、いろんな所に回って歩かなければならなかった」として、政府の態勢は「かなりの縦割りで一元的な対応ができなかった」と見ている。
記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 広川高史 Takashi Hirokawa thirokawa@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保義人 Yoshito Okubo yokubo1@bloomberg.net 香港 Peter Hirschberg phirschberg@bloomberg.net
更新日時: 2012/02/22 10:38 JST