(CNN) 東京電力福島第一原子力発電所の事故から間もなく1年。東電は原子炉の安定を保つための冷却作業を続け、周辺には汚染水をためる巨大なタンクが並ぶ。米国の専門家は12月に宣言された「冷温停止」の表現について、「極めて不適切」だとの見方を示し、依然として危険であることに変わりはないと指摘した。
冷温停止の表現は不適切だと話すのは、米国の原発運営に携わった経験を持つマイケル・フリードランダー氏。「これらの原子炉は原子力の観点からもエネルギーの観点からも確かに冷温であり、再び重大な事態に陥ったり爆発を起こしたりする可能性はゼロに近い」「しかしそれは東京電力などの対策によるものというよりは、1年近く停止していることによるものだ」と指摘する。
最も懸念されるのは、再度の地震や外的要因によって放射性物質が漏れ出すことだと同氏は言い、「最大のリスクは配管の損傷であり、放射性物質を含んだ大量の水が地下や海に流れ込んだりすることだ」とした。ただ、「放射性物質による大規模汚染の可能性はほぼゼロに近い」とも付け加えている。
事故を起こした原発の安定化の作業に力を入れていることについては、「極めて適切」だと同氏は評価。一方で、事故から1年を経て、世界は放射性物質の拡散にも目を向けるべきだと話す。
「人々がこの問題にあまり関心を払わないのは、放射性物質の濃度は極めて低く、たとえ汚染されたとしてもリスクは非常に小さいと考えるためだと思う」「しかし何百万もの人々が極めて濃度の低い(放射性物質に)さらされれば、いずれ影響が出るのは避けられない」(同氏)。
福島第一原発に近い太平洋では先週、魚類やプランクトンから一定レベルの放射性物質が見つかったと伝えられた。
しかし米ストーニーブルック大学のニコラス・フィッシャー教授(海洋科学)はこれについて、公衆の安全を脅かすレベルを下回っていると述べ、汚染物質は海岸堆積物に沈着する可能性の方が大きいと指摘した。海岸堆積物については分かっていないことも多く、「堆積物については多くの重要な情報が欠けている」と同教授は話している。