2012年1月6日 21時29分 更新:1月7日 0時53分
欧州債務危機拡大への懸念を背景に、年明け以降もユーロ安が止まらない。6日のニューヨーク外国為替市場では、米雇用統計改善を受けてドル買い・ユーロ売りが進み、これにつれてユーロは対円でも下落。一時1ユーロ=97円90銭台を付け、00年12月以来、約11年ぶりの円高・ユーロ安水準を記録した。市場では「欧州債務問題への各国の対応が不十分で、危機が拡大する」との不安も強まっており、「月内に1ユーロ=90円台前半までユーロ安が進む」との観測も出ている。
昨年7月に1ユーロ=110円台だったユーロ相場は、欧州危機の拡大とともに大幅に下落。12月30日には約10年半ぶりに1ユーロ=100円の大台を割り込み、5日には98円46銭を記録。さらに、6日のニューヨーク市場では米12月の雇用統計で失業率が4カ月連続で改善したことなどを材料にドル買い・ユーロ売りが加速。ユーロは対円でも一気に1ユーロ=97円台に急落、00年10月の対円での最安値(88円)にじりじりと迫る展開となっている。
ユーロ売り加速の背景には、イタリアやスペインなど財政悪化国を支援する欧州の安全網の整備が進んでいないことがある。
欧州各国は12月、域内の財政規律を強化することで一致。その後、国際通貨基金(IMF)に1500億ユーロを拠出して財政悪化国への支援能力を高めることで合意した。
しかし、ユーロ圏第3位の経済規模を持つイタリアなどの債務危機深刻化を懸念する市場では「安全網には1兆~2兆ユーロ規模が必要」と、より大胆な政策対応を求める声が強い。第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは「欧州の対応は踏み込み不足」と指摘する。
イタリアの国債利回りは年明け以降も自力での財政運営が困難な「危険水域」とされる7%前後で推移。2月には国債の大量償還(借金の返済)を迎える一方、米大手格付け会社は近く、ユーロ圏の国債を一斉格下げする構えで、市場の不安が高まっている。
みずほコーポレート銀行の唐鎌大輔マーケット・エコノミストは「格下げされれば、(ドイツやフランスなど)財政が比較的健全な国による財政悪化国に対する金融支援の能力も低下し、市場の不安が一段と高まる。月内に1ユーロ=95円割れの可能性が高い」と予想。来週はイタリア、スペインで今年初の国債の入札があり、十分な資金が集まらなければユーロ売りが一段と加速する恐れがある。【谷川貴史】
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