2012年3月3日03時00分
首都圏の駅で、若い女性をターゲットにした販売戦略が好調だ。キーワードは「女子目線」。なぜ支持されるのか、消費を呼び込む秘密を探った。
■ブランドよりセンス 手軽にリフレッシュ
東京・有楽町マリオンに昨秋開業したルミネ有楽町店。1階入り口にあるイスラエル製ボディーケア用品店「SABON(サボン)」のシックな店構えは、古い洋館を思わせる。女性客が手にとって試していた死海の塩入りのスクラブは、500ミリリットルで5千円と安価ではない。
JR東日本の子会社が運営するルミネは、首都圏の主要駅にある駅ビル。有楽町店は、15店目で初めて駅の外へ出た。ルミネは売り上げが低迷していた1997年、ターゲットをあえて「20代女子」に絞り込み、業績を回復。全店舗の合計売り上げ額は、リーマンショックが襲った08年を除き毎年、前年を上回る。
ルミネカードの会員約100万人の9割は女性で、その7割弱が20〜30代。ブランド品や外食にはお金をかけず、家で過ごす時間を豊かにする。そんなライフスタイルに合わせ、ボディーケアや生活雑貨の店を多くそろえる。
有楽町店の服飾テナントの目玉はセレクトショップ。大手百貨店のような高級ブランド品店はない。秋元清美・営業部長(43)は「センスが良く、他の人が持っていない。『ここにしかないもの』にならお金を使うんです」。
他のルミネ同様、駅からの近さが大きな強みだ。忙しい人が立ち寄って、手軽にリフレッシュできる空間を目指す。商品を3千円以上購入すると無料配送するサービスは「仕事の合間にも買える」と働く女性に支持されている。
JR東日本は01年以降、殺風景な駅構内を「エキュート」などの商業空間に次々と変身させている。少子高齢化で増収が見込めない鉄道に代わる柱として「生活サービス」に力を入れる。
同じくJR東日本子会社の駅ビル「アトレ」。ルミネと違って中規模の駅にあり、飲食店や食品売り場の比率が高い。三輪美恵・マーケティング開発部長(45)は「時間のない働く女性が欲しいと思う商品やサービスを、ワンフロアに凝縮させた」。ブティックの隣に花屋、向かいにアクセサリー店とカフェ。十数分でも一通り見て回れる。
■客層取り込みへ 百貨店も出店
会社などの行き帰りに、短時間でも立ち寄れる商業空間として、駅が注目されている。
老舗百貨店でしか買えなかった高級化粧品を、駅ビルで――。三越伊勢丹ホールディングスは6日、シャネルやジバンシーなどの外国製ブランド品を販売する「イセタンミラー」の1号店を、JR新宿駅の駅ビル内にオープンさせる。広報担当者は「勤め帰りの乗り継ぎの合間に、立ち寄ってもらえたら」と話す。
カジュアル衣料メーカー「ポイント」は、10年から20〜30代向けブランド「ローリーズファームプラス」を東京・上野駅など8駅に出店。床面積は通常店舗の半分以下。「普段は来ない層を取り込みたい」と通勤・通学客を狙う。(高橋美佐子)