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福島第1原発:楢葉で追悼式 桜に誓う故郷再生

追悼式で苗木を植樹する四家徳美さん=福島県楢葉町の天神岬スポーツ公園で2012年3月4日午前10時44分、須賀川理撮影
追悼式で苗木を植樹する四家徳美さん=福島県楢葉町の天神岬スポーツ公園で2012年3月4日午前10時44分、須賀川理撮影

 東京電力福島第1原発事故で、ほぼ全域が警戒区域に指定されている福島県楢葉町で4日、東日本大震災1年を前にした追悼式があり、犠牲者を悼む桜が植えられた。津波で両親を失った双葉地方水道企業団の嘱託職員、四家徳美(しけ・のりみ)さん(52)も避難先のいわき市から防護服姿で参列。前日に両親の葬儀を終えたばかりの四家さんは苗木を前に、故郷復興に全力を尽くすと誓った。

 避難する親類のことを考え、これまで父丞(たすく)さん(当時79歳)と母聡子(としこ)さん(同77歳)の葬儀を延期していた。「葬儀ができていないのが心残りだったので安心した」

 震災時、四家さんは両親と3人暮らしだった。自宅は海岸から約1キロ離れており、「大丈夫だろう」と思っていたが、仕事場から避難所に駆けつけると両親はおらず、1カ月半後、がれきの中から遺体で見つかった。

 以前は仕事の傍ら、両親や地域の人と米作りもしていた。大工だった丞さんは田植えの途中に抜け出して海に行くほどの釣り好き。聡子さんは踊りやゲートボールなど地域の行事によく参加した。年々足腰が弱っていく両親に「一緒に暮らす時間が続いてほしい」と願った。自分の定年後は両親とともに農産物の直売所を運営し、生きがいをつくろうと考えていた。

 いわき市の避難所などを転々とした四家さんは、避難所への水の配給や水道管調査に奔走した。慌ただしく時は過ぎたが、ふと緊張が解けると突然涙がこぼれ、夜中に目が覚めて寝付けないことも。高血圧になり、心筋梗塞(こうそく)の疑いがあると診断された。それでも「生きてこられたのは同僚や地域の人から頼りにされ優しくされたから」。家や家族は失ったが、心の財産を得た。

 警戒区域内の天神岬スポーツ公園であった追悼式には東京在住の弟浩美さん(49)も参列。他の遺族らとともに同町の死者・行方不明者の数と同じ13本の桜を植樹した。四家さんは「住民や子孫が苦しい時、この木を見て頑張れるようにしたい。生き残った者として故郷に戻れるよう全力を尽くすのが使命」と決意を語った。【村本聡】

毎日新聞 2012年3月4日 21時54分(最終更新 3月5日 1時34分)

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