福島市で診療所を運営する福島中央市民医療生活協同組合が、昨年の福島第1原発事故からの半年間と前年同期で外来患者延べ約9000人の疾患を集計したところ、事故を境に不眠症が27%、高血圧が13%増えていたことが分かった。同生協は「原発事故後の高い放射線量による不安やストレスが、体調悪化の引き金となっている状況は否めない」と分析し、事故による汚染が住民の心に深刻な影響を与えている実態を裏付けた形だ。
調査では、昨年3月11日~8月31日に診療所を受診した4551人と、一昨年3月11日~8月31日に受診した4434人のカルテから疾患を集計した。
その結果、不眠症が292人から370人に、高血圧が493人から557人に増えていた。免疫力低下などが原因で起きる帯状疱疹(ほうしん)が、19人から50人に急増。運動不足などからくる高脂血症も418人から449人に7%増えた。糖尿病、うつ病には変化がなかった。
同市は震災時、家屋倒壊はほとんどなく、住民が避難所や仮設住宅暮らしを強いられる状況ではなかった。だが、空間放射線量は中心部の杉妻町で原発事故以降の累積が約4ミリシーベルトと高くなっている。
同生協は「帯状疱疹については原発事故との因果関係は断言できないが、不安が増加要因となっている可能性がある」と分析している。【井上英介】
毎日新聞 2012年3月5日 2時30分(最終更新 3月5日 3時06分)
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