心臓の冠動脈バイパス手術を受けた天皇陛下が4日午後、入院から17日目に退院した。陛下はこの日午前、レントゲンなどの最終検査を受けて退院が決まった後、病室に集まった医師団に「お世話になりました。ありがとう」と感謝の言葉を述べたという。宮内庁の金沢一郎・皇室医務主管は会見で、術後の経過は必ずしも順調とは言えなかったことを明かしたが、リハビリが順調に進めば、「数カ月でテニスもできるようになるだろう」と明るい見通しを語った。
会見によると、天皇陛下は手術翌日の2月19日から、ベッドの脇に立つなどのリハビリを始め、今月2日には自転車型の器具をこぐまでに回復した。金沢主管は「歩くスピードが速くてこっちが大汗をかいたくらい。階段の昇降でなければ息は上がらない」と回復ぶりを話した。
ただ、胸に血液成分の血漿(けっしょう)がたまる「胸水貯留」や食欲不振があり、ご飯などの主食をあまり食べることができなかった。陛下自身、食欲のなさを心配していたという。皇后さまはほぼ1日おきに泊まりがけで付き添い、多くの人が記帳に訪れていることを伝えたり、世界的に再ヒットしている由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」を流すなど、心が和むよう工夫していたという。
この日も皇后さまは午前中から訪れており、退院が決まり天皇陛下と共に午後2時半過ぎに玄関ホールへ。陛下はスーツ姿で花束を持ち、集まった人たちに笑顔で何度も手を振って応えた。
玄関では執刀医の天野篤・順天堂大教授、小野稔・東大教授らが見送り、天野氏は記者団に「一日も早く陛下が日常を取り戻されて安堵(あんど)される日が来ることを待ち望んでいる。それまでは集中力を欠くことなく、医師団が協力して経過を見守らせていただきたい」と話した。
78歳の陛下は、3本の冠動脈のうち2本に狭窄(きょうさく)がある狭心症と診断され、2月17日に入院、18日に別の血管を使って迂回(うかい)路を作る手術を受けた。
4日夜、お住まいの皇居・御所では、秋篠宮ご夫妻と長男悠仁さま(5)、陛下の長女・黒田清子さん(42)らが出迎え、退院を祝ったという。【真鍋光之、川崎桂吾】
毎日新聞 2012年3月4日 21時26分
岩手県・宮城県に残る災害廃棄物の現状とそこで暮らす人々のいまを伝える写真展を開催中。