[訪問販売協会世界連盟 ニール・H・オッフェン事務局長に聞く] 訪問販売、そしてマルチレベル・マーケティングとは?
「マルチレベル・マーケティング」と聞いて、あなたはどんなイメージを思い浮かべるだろうか。
何となくいかがわしい印象を持つ人も多くいるだろう。
日本の「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」33条で定義されている「連鎖販売取引」は、米国などでは「マルチレベル・マーケティング(MLM)」と呼ばれており、あくまで訪問販売(ダイレクトセリング)に含まれるものである。しかし、法律で認められているこのビジネス形態を悪用した企業が出現した際に、「マルチまがい商法」という言葉が使われたことから、日本ではいつの間にか「マルチ商法」という呼称が根付いてしまい、いまだにネガティブな印象を引きずっている。
では、そもそも、マルチレベル・マーケティングとは何なのか。訪問販売が、その販売員に対する報酬制度によってシングルレベルとマルチレベルに分けられることを知る人は少ないのではないだろうか。
訪問販売業者らからなる国際組織「訪問販売協会世界連盟(World Federation of Direct Selling Association=WFDSA」の事務局長であり、「米国訪問販売協会(The Direct Selling Assorciation=DSA)」の最高執行責任者であるニール・H・オッフェン氏に話を聞いた。
「訪問販売(ダイレクトセリング)とは、店舗ではない場所での対面方式による消費者向け製品・サービスの販売で、会社が独立販売事業者(販売員、ディストリビューター)にその販売機会を提供するものです。業界というよりも流通形態と言った方が正しいでしょう。世界貿易機関(WTO)も『流通形態の一つである』と認識しています。
そしてマルチレベル・マーケティングとは、『訪問販売業界内で用いられる報酬体系の一つ』であり、販売者(販売員、ディストリビューター)の収入が、本人の売り上げだけ(シングルレベル)でなく、本人が直接リクルート(勧誘)した人の売り上げ、さらにその人がリクルートした人の売り上げにも基づくもの(マルチレベル)を指します。国によって多少表現の違いはありますが、これが世界で幅広く受け入れられている定義です」
つまり、マルチレベル・マーケティングとは、マーケティングの手法・類型を示すものではなく、訪問販売を行う販売員への報酬システムのことであり、訪問販売といえば無店舗販売のことであって、販売員に対する報酬がシングルレベル、マルチレベルであることとは、無関係であるといえる。
現在、マルチレベル・マーケティングは訪問販売の中で主流になってきているという。
「世界的な潮流でいえば、マルチレベル型の報酬体系を採用する訪問販売企業は、業界の主流となっています。例えば米国では、訪問販売協会の加盟社の約97%がマルチレベルです。現在、他の業界の大手企業が訪問販売企業を買収したり、訪問販売業界に参入したりしています」
マルチレベル・マーケティングという報酬システム自体、米国で1930年代に始まったものといわれ、売上高は世界第1位である。
このような長い歴史があり、大きな市場規模がある米国においても、訪問販売やその報酬システムの一つであるマルチレベル・マーケティングについては、日本と同じようにネガティブなイメージがあるという。
「消費者たちの大半は訪問販売で実際に経験したこと(商品、サービス)に満足しています。しかし、時に満足をしていない他人の経験を聞いてもいます。偏見の典型的な例、根深いものは、その人の経験よりも、他の人から伝え聞いた話に基づくものが多いのです。米国訪問販売協会が調査会社に依頼して調べたところ、『個人の経験と認識との間に亀裂が生じている』と指摘されました。つまり実態のないところでのイメージの問題が大きく、それを改善するには一朝一夕ではできないのです。
そこで私たちは『イメージ改善プログラム』を20年計画でスタートしました。
このプログラムでは、米国訪問販売協会が、消費者保護団体や政府の規制当局、メディア、学術分野とも連携し、『いい企業』と『悪い人たち』の違いについて、一般市民に対して啓蒙を行っていきます。これまで、私たちは訪問販売業界として自身の行っていることを広く、効果的に伝え切れなかった面もあります。だからこそ、その反省に立った上で、私たちの活動の素晴らしさを理解してほしいと考えています。
たとえば、一人の独立販売事業者が販売員として成功していれば、そのサクセスストーリーをみんなで共有したいのです。正しいことを正しい方法で行ったからこそ、その結果、欲しかった家電製品が買えたとか、家族にクリスマスプレゼントを贈ることができたなど、それは他の販売員のモデルとなり、広く一般へ正しい印象をアピールすることにもつながると思います」