行政機関が保有する重要な秘密を漏らした公務員らへの罰則を強化することを柱とした秘密保全法制の整備を提言した政府の有識者会議の議事録が作成されていなかったことがわかった。作成されたのは簡単な要旨だけで、録音もされていない。このため、法令の制定過程などが事後に検証できるよう文書作成を行政機関に求めた公文書管理法(11年4月施行)の趣旨に反しているとの指摘もある。
議事録が作成されていなかったのは、政府の「情報保全に関する検討委員会」の下に設けられた「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」(座長・縣(あがた)公一郎早稲田大教授)。政府が今国会への提出を目指して策定している同法案は、有識者会議が昨年8月に公表した報告書がたたき台となっている。会議は、11年1月から報告書案がまとまる6月までの6回(各2時間程度)にわたり、非公開で開催された。各回とも記録としてはA4判2枚程度の「議事要旨」だけだ。
公文書管理法は、行政機関に「法令の制定及びその経緯」について検証できるよう文書の作成を義務づけているが、要旨からは誰が、どのような発言をしたかは不明だ。
会議の事務局である内閣官房の担当者は取材に、「議事録や録音はない」と認めたうえで、「当時の担当者が不要だと判断したのだと思う。公表した議事要旨がすべてで、成果物として報告書があるだけだ」と述べた。
これに対し、「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「会議の検討過程は立法趣旨を示すもので、解釈・運用の参考にされるべきものだ。議事要旨は事後の検証に堪える内容になっておらず、公文書管理法に照らしても不適法だ。いまからでも作成すべきだ」と批判している。【臺宏士、青島顕】
毎日新聞 2012年3月4日 東京朝刊
岩手県・宮城県に残る災害廃棄物の現状とそこで暮らす人々のいまを伝える写真展を開催中。