輪廻のラグランジェ第7話「曇り のち 鴨川」。このエピソードにはひとつの大きな謎がある。
なぜうなぎがプールに放たれたかだ。
京乃まどかはこう話をまとめる。
「明後日調理実習部主催で開催される校内うなぎ蒲焼大会用のうなぎを
魚屋さんがいけすと間違えてプールに放っていってしまった」
この話、違和感を感じないだろうか?
…別の言い方をしよう。あなたはいけすとプールを間違えたことがあるか?
そう、通常いけすとプールは間違えない。
これを作劇上の都合と考えるのは簡単だ。
うなぎを捕まえるというエピソードは
まどかにとっては体が濡れるという条件を加えてすら着替えるのを忘れてしまっている、
ジャージ部魂の欠如の表現として申し分ない。
ランにとってはうなぎという運命の暗喩に翻弄され、
うなぎという鎖の暗喩に体を縛られるという比喩表現として有効に機能している。
だがこれらの効果だけでうなぎエピソードが挿入されたのではない。
先程いけすとプールを間違えるとは考えられないと言った。
「通常ならば」
そう、このエピソードには通常ではない、イレギュラーが存在していた。
ここまで言えばお分かりであろう。
うなぎをプールに放っていった魚屋さんはアレイである。
4話でテネリタスを駆ってファロスを脱走したアレイ。
だが鹵獲した敵対勢力のロボを十全な状態で置いておくだろうか?
否。あのときテネリタスは万全な状態ではなかったはずだ。
テネリタスは月に向かって飛翔した後海へと墜落、アレイは機体から放り出される。
月に照らされた海岸を歩く魚屋の主人は流れ着いたアレイを見つける。
いつも何を考えているかわからないアレイだが
自分に優しい人になつくことは外伝コミカライズ暁月のメモリアを見ればわかる。
アレイが魚屋を手伝うのは自然な成り行きだ。
こうして7話に至る。
地球の常識に詳しくないアレイならばいけすとプールを間違えるのも無理からぬことだ。
さらに考えをすすめればうなぎ蒲焼大会はアレイを逃した何者かが仕掛けた
アレイを誘い出すための罠の可能性が高い。
だがこちらについては不確定要素が多く断言まではできない。
以上がうなぎがプールに放たれた真相だ。
まどかの天真爛漫さで問題を解決させながらしっかりとした伏線と設定もおろそかにしない。
輪廻のラグランジェの真骨頂といえるだろう。
吉岡 公威
スクウェア・エニックス (2012-01-21)
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