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がれき処理「可能な限り」国内最多受け入れ・山形の8ヵ月

気仙沼市から運び込まれた木くずの放射線量を測る処理業者=1日、村山市のやまがたグリーンリサイクル

 東日本大震災で発生した岩手、宮城両県のがれきの広域処理が全国的に滞る中、真っ先にがれきを受け入れた山形県で処理が始まってから8カ月がたった。今のところ放射性物質に関する異常は確認されておらず、目立った反対運動も起きていない。地元からの不安の声はゼロとはいえず、県は「安全の確認を徹底しながら、できる限り受け入れを続けたい」との姿勢だ。(関川洋平)

 山形県が受け入れたがれきの総量は岩手、宮城両県の4万9573トンで、青森県(6300トン)や東京都(3500トン)を上回り国内最多だ。
 山形でがれき処理が進む背景を県循環型社会推進課は(1)がれきの放射線量について国より厳しい独自の基準を昨年8月に設けるなど、初動が早かった(2)隣県の宮城とは震災前から業者間のパイプがあった−などと分析する。
 がれきの広域処理をめぐっては、放射性物質の影響を懸念する住民の反対が全国で相次ぎ、山形県内でも県庁には散発的に抗議の電話やメールが寄せられている。子どもを持つ女性が「放射能をまき散らさないで」などと訴えるケースが多いという。
 県民の不安解消のため県は、がれきの放射性物質の検査や処理施設周辺の空間放射線量の測定を行っている。データは随時ホームページなどで公表し、現在まで基準値を超えた例はない。吉村美栄子知事は「県民の理解を得ながら受け入れを進めてきた」と強調。県庁には少数だが「受け入れ量を増やすべきだ」との意見も寄せられているという。
 ただ、山形が受け入れているがれきは埋め立て処理する廃棄食品や不燃物が大半。これに対し被災地では、仮置き場で自然発火する恐れがある建材、プラスチックなど可燃物の処理が優先的に求められている。「山形県内の焼却施設の余力は少ない」(循環型社会推進課)という事情があり、広域的な処理の分担はこの点からも急がれる。

◎木くず処理、村山の業者 測定続け信頼得る

 山形県内で最も早くがれきの受け入れを始めたのは、村山市の廃棄物処理業者「やまがたグリーンリサイクル」。昨年7月からほぼ毎日、気仙沼市の木くずを運び込み、県内で発生する一般の木くずや剪定(せんてい)枝と混ぜ、バイオマス発電の燃料として活用している。
 1日午前、同社に木くずを積んだトラックが到着した。すぐに社員が荷台に上り、線量計を近づける。地元住民との取り決めで、空間放射線量が毎時0.2マイクロシーベルト以上なら即座に送り返すことになっているため、荷降ろしの前に測定する。
 測定結果は毎時0.03マイクロシーベルト。この日はトラック5台分、計28トンの木くずが搬入され、全て受け入れ可能だった。これまでに基準値を超えた事例はなく、県の放射性セシウムの検査も毎月クリアしている。処理量は2月で5000トンを超えた。
 受け入れを始めた当初、地元から反対の声が上がった。昨年8月に2度開いた説明会では「風評被害を受ける」「子どもに影響がある」などと、近隣の企業や住民から抗議が相次いだ。
 だが、抗議行動に発展することはなく、現在はさらに歩み寄りの兆しが見えている。
 同社はことしに入り、新年度のがれき受け入れに関して、あらためて説明会を開くことを提案。対する工業団地や町内会側は、これまでの放射線量の測定結果などから「あえて開かなくてもいい」との返事だったという。
 村山市環境課は「情報公開など業者側の努力もあり、現在は地元の反対意見は沈静化している」とした上で、「信頼関係を保つには放射線量の測定を続けることが大前提。指導する市の役割も大きい」と強調する。

【メモ】 山形県の吉村美栄子知事は昨年5月、「隣県として、できる限りがれき処理をサポートしたい」と表明。7月からこれまで米沢市、村山市、中山町など3市4町で民間業者ががれきを処理した。被災地のがれきは岩手県で約57万トン、宮城県で少なくとも約344万トンを県外処理する必要がある。福島県のがれきは全て県内で処理される。


2012年03月03日土曜日


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