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東電事業計画:値上げは3年間限定 柏崎原発再稼働見込む

東京電力本店ビル(中央)=根岸基弘撮影
東京電力本店ビル(中央)=根岸基弘撮影

 東京電力と政府の原子力損害賠償支援機構が福島第1原発事故の賠償・処理と、電力の安定供給との両立に向けて月内にまとめる「総合特別事業計画」の概要が2日、分かった。焦点の電気料金引き上げでは、原価計算の期間を従来の1年から3年に延ばし値上げ幅を圧縮した上、早ければ7月から家庭向け料金を10%程度値上げする方針を盛り込む。事業計画は14年3月末までに新潟・柏崎刈羽原発が再稼働するとの想定も明記。リストラ上積みとともに、原発再稼働により燃料コストを低減させ、電気料金の値上げ期間を今後3年間に限定。その後は元の水準に戻すか、料金引き下げを検討する考えを示す。

 ただ、事業計画の前提となる原発の再稼働実現には立地自治体の同意が不可欠。現状は同意の見通しは立っておらず、事業計画は電気料金の値上げ幅や期間が変わる可能性があることも注記する方向だ。

 事業計画の概要が固まったことで、今後は政府主導による東電の経営再建が本格化する。政府は今後、発送電分離など国のエネルギー政策の抜本改革にも取り組む方針で、改革策を東電の経営にも反映させたい考えだ。

 事業計画ではこのほか、東電が政府に機構を通じて1兆円規模の公的資本注入を申請する方針を明記。政府は資本注入に合わせて東電の経営に対する議決権の最大3分の2超を握り、実質国有化する。金融機関は総額1兆700億円の追加融資を行い、資金繰りを支援する。

 事業計画は、原子力損害賠償支援機構法に基づき、東電が国からの資金援助を受ける際に策定するよう義務づけられている。経営合理化や株主、債権者など関係者への協力要請を明記する必要があり、今月末までに枝野幸男経済産業相の認定を得て公表する。支援機構は東電の勝俣恒久会長の後任人事も同時に発表する方向で人選を急いでいる。

 事業計画の策定に絡んで、支援機構は2日までに、金融機関に今後10年間の資金計画を提示。企業・家庭向けとも電気料金を値上げするとの前提で、3年後の15年3月期には経常黒字、5年後の17年3月期には社債の発行を再開し、市場からの資金調達を目指す方針を示した。損害賠償に充てられた公的資金の返済は14年3月期から始め、税引き前利益の半分を充てる。【野原大輔、和田憲二】

毎日新聞 2012年3月3日 2時30分(最終更新 3月3日 3時09分)

 

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