海賊版カードで有料TV見放題 暗号解読か、総務省調査

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上が海賊版のカード、下が正規のB−CASカード(写真は一部修整しています)

 有料のテレビ番組を放送事業者に金を払わずに視聴できる非正規カードが、インターネットで出回っている。デジタル放送に対応するすべてのテレビに付く「B―CASカード」の海賊版で、不正防止用の暗号化技術が破られた可能性がある。総務省は調査を始めた。

■ネットで「1枚4万9800円」

 暗号が解読された場合、B―CASカードの交換などシステム全体が刷新を迫られる恐れもある。正規カードの発行枚数は昨年3月末時点で約1億5千万枚。

 海賊版カードはホームページを通じ、1枚4万9800円で売られている。WOWOWなどBS89チャンネルとCS「スカパー!e2」全チャンネルが視聴でき、通常の料金なら1カ月あたり計3万6661円分になるが、支払わないまま半永久的に使えると宣伝されている。

 実際に入手した男性が取材に応じた。黒色のカードを一般的なテレビに差し込むと、ハリウッド映画や著名外国人歌手のコンサートの模様などが次々と映し出された。いずれも本来は月2千円程度を払わなければ見られない番組だ。

 この男性は1月末に購入、台湾の私書箱から郵送されたという。同月に売り出され、男性が販売サイトから在庫数を確認した範囲では、すでに約2500枚が売られたとみられる。

 有料番組は通常、映像にガードがかけられ、未契約の状態でチャンネルを合わせても、ゆがんだ映像や契約を促す文章が映る。B―CASカードには有料番組の契約内容が暗号化されて書き込まれ、それに応じてガードを解除している。

 海賊版の制作者はこの暗号を解読し、未契約の有料番組を契約済みに書き換えたとみられる。

 知的財産権に詳しい福井健策弁護士は「技術的に不明な点はあるが、本来必要な契約を回避する手段を提供しており、販売者は不正競争防止法違反に当たる疑いが強い。利用者も業務妨害罪等に問われる可能性はある」とする。

 総務省は「このようなカードは過去に例がなく、悪質性が高い。情報を収集した上で対処を考えたい」と話す。B―CASカードを発行するビーエス・コンディショナルアクセスシステムズや、有料番組を放送するWOWOW(東京)とスカパーJSAT(同)は、「不正なカードの存在は認識しており、詳細を調査中」としている。(神田大介)

     ◇

 〈B―CASカード〉 デジタル放送のテレビやチューナーに付属し、差し込まないと番組が映らない。有料番組の受信のほか、番組の不正コピーを防ぐために使われる。放送・家電各社の出資でつくる会社が発行する。一般的には銀行キャッシュカードと同程度の大きさで、赤や青、オレンジ色。

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