政府は待機児童を解消するために、幼稚園と保育所の機能を一体化させた施設、「総合こども園」を創設することを柱とした新たな子育て支援策を決定し、必要な法案を消費税率を引き上げるための法案と一緒に国会に提出することを確認しました。
政府は2日、すべての閣僚が出席して少子化社会対策会議を開き、若い世代に対する社会保障の機能を強化するため、新たな子育て支援策を決定しました。
支援策は、待機児童の解消に向けて、幼稚園と保育所の機能を一体化させた施設、「総合こども園」を創設することを柱とし、この施設を増やすため株式会社やNPOの参入を認めるとしています。
そして 「総合こども園」には公的な給付も行い、教育と保育の質を担保することで、現在、全国におよそ2万3000か所ある保育所の大半を3年程度かけて「総合こども園」に移行するとともに、1万3000か所以上ある幼稚園も、順次、「総合こども園」へ移行させていくとしています。
会議の中で、野田総理大臣は「この新システムは、民主党を中心とする政権の真骨頂で社会保障改革の柱だ。税制改革関連法案と同時提出になるので、その準備もしっかりしてほしい。この新システムの意義を国民に広くPRし、法案を通すための総力を結集してほしい」と指示し、必要な法案を消費増税法案と一緒に今月末までに国会に提出し、成立を期す考えを示しました。
政府は今回の支援策を社会保障と税の一体改革の一環と位置づけており、消費税率の10%への引き上げが実現した場合、増収分のうち年に7000億円程度を充てる方針です。
政府はこうした子育て支援策によって少子化に歯止めをかけ、経済成長につなげたい考えです。
なぜ、保育園と幼稚園を一体化するのか。
その背景には小さな子どもの預かり先を増やすことで待機児童の解消につなげたい考えがあります。
現在、小学校入学前の子どもたちが通う施設は、主に共働き家庭の子どもを0歳から対象に8時間以上預かる保育園と、3歳以上の子どもが日中4時間ほど過ごす幼稚園に分かれています。
景気の低迷から子どもの預け先があるなら働きたいというニーズが増え、都市部を中心に保育園に入園を希望する数が定員を上回る状況が続いています。
その一方で、幼稚園では定員割れが出るケースも多くなっています。
一体化することで幼稚園でも2歳以下の子どもを受け入れるようになれば待機児童の解消につながると期待されているのです。
新たな子育て支援策では企業やNPOの保育事業への参入も促し、待機児童の受け皿としていきます。
学習塾など子どもに関連する業界からは少子化のなか、参入に関心が高まっていますが、これまで企業やNPOは補助金で社会福祉法人などと差をつけられていたり自治体によっては参入が認められないケースがありました。
新しい支援策では企業やNPOも一定の基準を満たせば、参入できるようにするほか補助金などの差もなくす方針です。
埼玉や東京で30か所以上の保育所を運営する株式会社の安永愛香さんは「民間が参入しやすくなることは待機児童対策にもつながっていくと思っている。また、参入することでいい意味で保育業界で競争が起きていく」と話しています。
一方、企業の参入については慎重な意見もあります。
保育士や保育所の保護者で作る全国保育団体連絡会の実方伸子事務局長は「子育てビジネスが隆盛を極めているなかで儲ける目的で参入しようという企業が入ってこないとも限らない。保育に熱心な企業ばかりが参入するとは限らない恐れがある」と話しています。
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