コラム

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復職成功者が語る「社員のメンタルサポート術」
~【メンタルに不安を抱えた人が会社に望むこと】~
第4回 環境編

連載4回目 環境編
(気分転換が気軽に行えるオフィス作り、フリーデスク制の導入など)

ここ数年、IT企業を中心に斬新なオフィス作りがマスコミに紹介されていますが、まだまだ日本のオフィスというのはとても保守的です。決められた座席があり、就業時間中はその席に留まって仕事をすることを求められ、会社の外に出てはいけないような雰囲気が根強く残っています。

無論、仕事によっては、その場所でしかできない仕事というのもあります。しかし、休憩時間は、生産性を上げるうえでとても重要な時間です。ぶっ続けで仕事をし続けていると、徐々にミスが増えてきますが、ほんの数分、息抜きをしたら、集中力が戻ってきたという経験は誰しもあるものだと思います。「やる気」も「集中力」も無限に存在しているわけではなく、限りのあるリソースです。「休憩」することで少しでも回復させ、大切に適切に使っていく必要があります。

メンタルに不安を抱える人は、意識的に「休憩」をスケジュールに組み込んでおく必要があると思います。特にうつ病を患っていると、直接自分に関係ないことであっても、他人が怒られていたり、愚痴っていたり、好ましいものではない空気を敏感に察知してしまい、気がついたらヘトヘトで、落ち込む寸前だったといったことが起こりやすいので、なおさら重要と言えます。

デスクで、ちょっとSNSなどを閲覧して気分転換を図るのも良いのですが、オススメは会社の外に出てみることです。私もいろいろ試してみたのですが、オフィスの中で気分転換しようと意気込んでみても、むしろその気になる好ましくない空気にばかり意識を向けてしまい、まったく気分転換になっていなかったことが多かったので、外の空気に触れた方が有効だと思います。内勤の人などには、難しいかもしれませんが、お昼休みなどを使って意識的に休憩を取ることが重要です。

また、働く場所を変えてみるという工夫も有効です。昨今「ノマドワーク」という言葉がバズワードになっていますが、何もカフェで仕事をすることだけがノマドワークではありません。指定のデスクではなく、同じ社内であっても別の場所に移動してみるだけで、有限の「やる気」と「集中力」を適切にコントロールすることができることがあります。

コミュニケーションは仕事を進める上でとても大切ですが、ひとりで集中して行う必要がある仕事中に、「コレどうなってる?」などと話しかけられて、集中力が途切れてしまったという経験をお持ちの方も多いでしょう。下着メーカーのトリンプ社には「がんばるタイム」という時間があり、全社員、私語厳禁の中、集中して仕事をする時間をあえて設けているという話は有名です。こうしたルールを個人が勝手に取り入れることによって、周囲と足並みが揃わなくなってしまう可能性は否定できませんが、自席ではなく、会議室やミーティングコーナーなど、場所を変えることによって、「この人がココにいるときは、どうも話しかけちゃいけないみたいだ」と周囲にメッセージを発していくことはできると私は思っています。

意識的に休憩を取ること、働く場所を変えてみることの2つは、有限の「やる気」と「集中力」を適切に配分するうえで有効な工夫ではないかと思います。

酒井 一太
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