「妊婦暴行騒動」に見る韓国ネットユーザーの心理

■有名人の言葉を信じる「同調化」

 人間は物事を判断する際、他人の意見を積極的に参考にする。自分の意見がない場合、知人や好きな人の意見をそのまま受け入れる傾向にある。これがすなわち「同調化」現象だ。例えば信号が赤でも、隣の人が道を渡れば無意識に自分も渡ってしまう現象などが同調化に当たる。

 ソン教授は「有名人や自分の好きな人の行動は、批判せずに受け入れる傾向がさらに強い」と語る。今回は、歌手のシン・ヘチョルさんがツイッターで「自分もこの店で不親切な接客を受けた」とつぶやいたことが、事態をさらに悪化させる一因となった。

■信念と異なる情報を無視する「確証バイアス」

 「確証バイアス」とは、自分の信念に見合う情報を受け入れ、信念と異なる情報は無視して先入観を補強する傾向を指す。選択的知覚は無意識的なものだが、確証バイアスは自身の意識と判断が基になっている。

 菜鮮堂の事件で「店員が悪い」と判断した人々は、多くの情報の中から自身の判断に見合った情報だけを集め、確信を得たというわけだ。「菜鮮堂の店員が悪い」という情報だけを正しいと判断し、一方的な情報だけを受け入れることで、偏った意見を持つに至った。ソウル大心理学科の郭錦珠(クァク・クムジュ)教授は「人々が自分の考えと同じなら受け入れ、そうでなければ批判的な態度を見せた今回の問題も、確証バイアスによるものと分析できる」と説明した。

■「集団の極端化」で理性的な検証が欠如

 菜鮮堂の店員が悪いと考える人々が集まり、さらに極端な考えを持つようになった現象は「集団の極端化」という言葉で説明できる。集団の極端化が起こると、後から伝えられた情報を理性的に検証しようとしなくなる。こうした集団の極端化はツイッターなどのSNSにより次第に深化する。考えが似通った者同士がフォローし合うツイッターで同じ考えを持つ人々が集まり、自分に近い考えを持つ人とそうでない人を区別するグループ分けが起こることもある。延世大心理学科のファン・サンミン教授は「自分の考えと異なるさまざまな情報があっても、それらの情報に対する検証はなかった」と説明している。

金城敏(キム・ソンミン)記者
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