首都圏連続不審死:裁判員の任期100日間 5日選任

2012年1月3日 21時17分

 首都圏連続不審死事件で、練炭自殺を装って男性3人を殺害したとして殺人罪などに問われている木嶋佳苗被告(37)のさいたま地裁(大熊一之裁判長)での初公判(10日)に向け、審理する裁判員が5日に決まる。裁判員の在任期間は過去最長の100日間。候補者は過去最多の330人で、ここから選任される6人の裁判員が、殺人や詐欺など計10事件を一括審理する。被告側が殺人罪で無罪を主張する中、死刑求刑の可能性もあり、審理期間、内容ともに裁判員の負担は多大だ。

 裁判は4月13日の判決まで予備日を含め計38回の公判があり、3月13日の結審まで出廷は週にほぼ4回。最高裁によると、裁判員が裁判所に出向いた全国平均は4.5日で、これを大幅に上回る。裁判員の在任期間はこれまで、10月に大阪地裁で死刑判決が言い渡された放火殺人事件の60日間が最長だった。

 一連の事件は、目撃者や物証が乏しい上、当初自殺と判断され司法解剖されなかった遺体もある。検察側は状況証拠の積み重ねで「被告以外の犯行はあり得ない」として有罪立証を目指す。公判で尋問される証人は延べ63人に上る。

 複数の事件で起訴されれば事件ごと別々の裁判員で担当する「区分審理」も認められている。だが、今回は各事件に共通点が多く密接に関連していると検察側が主張し、同じ6人の裁判員が担当する一括審理となった。長期で難しい裁判になると見込まれることから裁判所は辞退者が続出する可能性も考慮し、通常60~70人程度の候補者呼び出しを大幅に増やした。補充裁判員も通常の2人程度から6人に増やす。【飼手勇介、田口雅士、平川昌範】

 弁護士の四宮啓・国学院大法科大学院教授の話 殺人の動機に詐欺が関わる可能性があるとすれば一括審理はやむを得ない。長期審理になるが、司法への国民参加という制度の意義を考えると、重大事件ほど国民が参加すべきだ。難しい事件だからこそ、国民の複数の目で判断する必要がある。常識に基づく証拠の判断にスペシャリストはいない。市民でも十分務まる。

 元判事の西野喜一・新潟大法科大学院教授の話 裁判官でも大変な難事件・大事件で、それを抽選で選ばれた普通の国民が審理の全部に参加するというのは大きな負担だ。平日の日中に時間が取れる人は限られるはずで、裁判員の年齢や職業に偏りが出るのではないか。状況証拠で有罪か無罪かを判断しなければならないことも予想され、的確な判断ができなかったり途中で離脱したりする裁判員が出ることも考えられる。

 ◇首都圏連続不審死事件

 木嶋佳苗被告は殺人3件、詐欺3件、詐欺未遂3件、窃盗1件の計10事件で起訴された。起訴状によると、殺人の3件は(1)09年8月、埼玉県富士見市の駐車場に止めたレンタカーで、交際していた東京都千代田区の会社員、大出嘉之さん(当時41歳)を薬物で眠らせ、練炭に火をつけ一酸化炭素中毒で殺害(2)同年1月、交際中の青梅市の会社員、寺田隆夫さん(同53歳)をほぼ同様の手法で殺害(遺体発見は翌2月。未解剖のため薬物使用の有無は不明)(3)同年5月、自分がヘルパーとして出入りしていた千葉県野田市の無職、安藤建三さん(同80歳)を同様の手法で殺害--したとされる。

top
文字サイズ変更
このエントリーをはてなブックマークに追加
Check
この記事を印刷

PR情報

スポンサーサイト検索

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド

特集企画

東海大学:東日本大震災から1年。地震はいつ来るのか。

難しいといわれる地震予知に挑む、

地震予知研究センター長、長尾教授に聞く。

知ってほしい 岩手・宮城のガレキのいま ~1日も早い復興を目指して~ 写真展

岩手県・宮城県に残る災害廃棄物の現状とそこで暮らす人々のいまを伝える写真展を開催中。