75歳以上の人が入る後期高齢者医療制度の12~13年度の平均保険料(年額、見込み)を毎日新聞が調べたところ、未確定の青森県を除く46都道府県のうち、42都道府県で現行(10~11年度)より上昇することが分かった。徳島県の13%増を筆頭に5%以上アップするところが半数超の25都府県に達する。金額でも東京都の年間7865円増をはじめ、8都県で5000円超の負担増となる。高齢化で12年度予算の後期医療費が前年度比5.9%増の14.2兆円となるのに加え、前回改定の10年度に資金を投入し、上昇幅を抑えた反動が噴き出した格好だ。
08年度に発足した後期医療制度は各都道府県の広域連合が運営し、保険料は2年ごとに改定される。初改定の前回、各広域連合は厚生労働省の要請で基金を取り崩すなどして計約2000億円を投入し、全国平均で保険料の伸びを0.2%増(年間約160円)に抑えた。同省によると、この時にアップしたのは31都道府県、伸び幅も徳島県の7.7%が最高で、今回の急増ぶりは際立っている。
前回、各広域連合が多額の資金投入に踏み切ったのは「後期医療を12年度で廃止する」との方針を掲げる民主党政権に呼応し、基金を取り崩しても乗り切れると判断したためだ。だが、政府が今国会成立を目指す「後期医療廃止法案」は提出のメドすら立たない。「次の改定を考慮し、取り崩しは慎重に行った」(宮崎県)という広域連合も多く、全体の負担を押し上げている。
徳島に次いで保険料の上昇幅が大きいのは、宮崎(10.7%)、滋賀、高知(9.9%)の順。栃木、群馬、東京、富山、三重、愛媛なども9%台だ。一方、新潟、千葉、岩手、福井の4県は下がる。岩手県は11年度の医療費が東日本大震災の影響で前年度の半分程度の伸びにとどまり、前回の保険料抑制財源を今回改定に充てられるためだ。
金額では、東京都と神奈川県の保険料が年間9万円を超す。保険料は所得に応じて決まる部分があるため、所得水準の高い大都市で高くなっている。東京都は年間の保険料上限を5万円増の55万円に引き上げたことも影響した。後期医療の給付費は、全体の5割を税金、4割を現役の支援で、残る1割を75歳以上の保険料で賄う。【鈴木直】
毎日新聞 2012年3月2日 0時57分(最終更新 3月2日 1時14分)
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