【柴田惣一のズバリ直撃：狂虎シン襲った一般人（前編）】
〝狂虎〟タイガー・ジェット・シンを襲ったテロリストを発見。日本プロレス史にその名を残す大悪党にイスを振りおろした命知らずは、横浜市内のA氏（さまざまな職業を経てホテルマンとなり、１０年前から横浜市内のホテルで社長を務める）。「いや〜、３３年も経ったのか。でも昨日のコトのようです」と若気の至りを振り返った。

——「お宝写真館」（１１年１１月１１日付け本紙５面）にシンをイスで襲撃したシーンが掲載された

A社長：いや〜、お恥ずかしい。若気の至り。顔もバッチリ映っているな（苦笑い）。

——覚えているか？

A社長：もちろん。シンにやられて顔がはれ上がってしまった。左目は内出血して、しばらく外出できなかった。少しよくなっても帽子をかぶって大きなマスクをして歩いていた。いかにも怪しくて夜なんて何度も職質された。あの時もそうだけど、その後も大変だった。当時の彼女に「どこでケンカしてきたの」って怒られて。プロレスに興味のない子だったから、最後までわかってもらえなかった。

——テロは計画的だったのか

A社長：新日本プロレスを旗揚げの時から応援していた。会場にもよく行っていた。せっかく、猪木さんが理想のプロレスを目指して頑張っているのに、ストロングスタイルをぶち壊すシンのやり口が許せなかった。実は前々から考えていた。「いつか、やってやろう」と。

——決行の現場は千葉公園体育館だった

A社長：当時は場外フェンスもなくて、今ほど警備も厳しくなかった。リングサイドで素人が写真を撮れたりもした。チャンスは結構あったんだ。でも、イザとなるとなかなか足が動かなかった。何度か延期していた。決行の時は前から４、５列目の席だったかな。シンが藤波さんをいつものように汚い手で痛めつけている。「あっ」と気づいたら自分の席のイスを持ってリングに上がっていた。

——あのシンを襲うとは…

A社長：手応えがあった。２発入れたはず。元々、正義感が強かったし「俺がやらなきゃ」なんてあの当時は思い込んでいたんだろう。会場のトイレで出くわして私自身も殴られそうになったこともあったし、他のファンの人たちも逃げ惑う場面にも何度も出くわしていたから。今、振り返れば浅はかだけど、義憤に駆られて後先考えずに突進してしまった。怖いもの知らずだよね（苦笑い）。

——シンの唖然とした表情が印象的だ

A社長：あのシンも「まさか」だったんだろう。

※続く