東京電力福島第1原発事故で県内に飛散した放射性物質が健康にもたらす影響を議論するため、県が非公開で開催した有識者会議の結論として、県がホームページ(HP)に「全く問題ないレベル」と記していることが分かった。会議終了後、報道陣には「安全もしくはほぼ安全」と説明していたが、HPではより安全性を強調する表現に変更されていた。HPでの表現変更を知らされていなかった同会議の委員の一人は「『全く』という表現に違和感を感じる」と県の対応を批判している。【増田勝彦】
同会議は昨年11月21日、県の新木恵一健康福祉部長を委員長に、群馬大、県立がんセンター、県立県民健康科学大から放射線専門家各2人、日本原子力研究開発機構から1人の委員が出席して、非公開で開催された。
約1時間半の会議終了後、県の担当者が概要を説明し「県内の空間放射線量から判断して、安全もしくは、ほぼ安全との認識で一致した」と発表していた。
しかしHPで公表した「放射線による健康への影響に関する有識者会議結果」(A4判3ページ)では、質疑や意見など計12項目の概要を記し、議事内容の「まとめ」では「今回の福島第1原発事故を起因とする放射性物質の人の健康への影響については、全く問題ないレベルである」と断定的な表現になっている。県によると、公表は昨年12月下旬で、報道発表はなかった。
出席した委員の一人は「委員の半数は県関係の機関に所属しており、県の意向に反論しにくい雰囲気はあったが、県の説明に委員側からの反発や意見はあった」と述べ、別の委員は「県内でも除染が必要な地域がある状況を考えると、安全ではあると考えるが『全く』という言葉は使いにくい」と批判している。また表現変更について県側から文言の確認はなかったという。
事務局の県保健予防課は、毎日新聞の取材に「全く問題ないレベル」に変わったことについて「とりまとめ案を作り、了解を取った」と回答。しかし「各委員は了承しているか」の質問には「会議としての、とりまとめ」とだけ答えた。詳細な議事録については「作っていない」という。
毎日新聞 2012年3月1日 地方版