自転車

アルミ ロウ付 almit

 彼方此方に書いてきたが、超難関の アルミ ロウ付 almit に付いて、新たな資料を入手し
 たので防備録の意味を込めて纏めておこう。今迄 詳しい取扱説明書が無かった (知らなかっ
 た) ので試行錯誤の繰り返しであり・自己流だった。 取扱説明書を精読すると、偶然にも正
 しい処もあったが、間違えた遣り方をしている箇所もあった。

 アルミロウ付の原則は、アルミハンダを直接溶かすのではなく、アルミ材(板・
 鋳物)を熱してその温度でハンダを溶かし、アルミ酸化膜をアルミットの先端で
 こすって溶かしこむ。

         アルミロウ付に 自己流不可 の様だ。

 次項 自転車の製作サスペンション受け金具 にも書いた通り、アルミロウ付の仕上りが芳
 しくなく(数カ所 が出来た)、使ったコトのない新たなアルミロウ(AM-022)を入手した。
 以前から此のアルミロウの存在は知っていたが、小口販売をする店が見付からず(無かった様
 に思う)、販売している処も大口だけだった。 kg 単位で買う訳にもいかず諦めていたところ、
 偶然 小口販売している 会社 を見付けた。此の会社は非常に良心的で、アルミロウ AM-022
 に限り1本から販売してくれ、送料に迄・細かい配慮をしてくれている。
 ( almit に付いて詳細な説明があり 是非・一読を御勧めする )


アルミット (AM-22)
   am_22
 左図が今回入手した アルミット (AM-22)
 巣埋・肉盛りとして使う積もりなので、少量で
 間に合うので3本のみ。

 Web から所定の書式で申し込むと、少量の場
 合 封筒にて AM-22 と共に請求書・納品書・
 郵便振替用紙・取扱説明書が同封されてくる。
 料金後払い。


我々素人が通常入手出来る アルミット (almit ; am-055)
     ( アルミットの融点が母材の融点に近いので 常温下での作業は非常に難しい )
     ( 注意 ; A2000系,5000系,7000系のアルミ材には使用できない )

   am_055

 上図は、東急ハンズやDIY店で通常・我々が買える アルミット (almit=アルミ半田) である。
 此の他に、2種類 (都合3種類) のアルミ半田が在る事は知っていたが、今回・AM-022 を入手
 して添付の取扱説明書を見て他に特殊用途2種類;都合6種類のアルミ半田が在る事を知った。
 我々が通常入手出来るアルミ半田(ロウ)は4種類・・・以下に取説より抜粋して記す。


アルミット (almit) の種類

接着温度 フラックス抗張力 特   徴  実 用 例   備   考  
AM-055  ℃
580〜592
055用
 要
kg/mm2
 20.4
耐蝕性・強度共
強く溶接に匹敵
耐アルマイト処理
無変色
ライターケースロウ付け
アルミサッシュ角付
アルミパイプ接着
要ロウ付後洗浄
硝酸・弗酸混合液
AM-350  ℃
350〜400
不 要kg/mm2
 28.6
総てのアルミ合
金の接着に適す
耐蝕性・強度共
強く溶接に匹敵
テレビアンテナ、アルミパイプ
継手、アルミ筐体、アルミ
サッシュ、其の他分割
鋳造の接着
板金物の接着
鋳物の断面付
SP-27  ℃
250〜300
S P 用
 要
kg/mm2
 14.76
耐蝕、強度はAM
-22に勝る。電気
ゴテ、ブンゼンバーナー
でも作業可
異種金属とアルミの接
着、パーツ類の接着、
コンデンサーケースアルミキャップ
の足付け、電球口金
ステンレスに用いる場
合はSS用フラックスを
用いる
AM-022  ℃
200〜250
不 要kg/mm2
  9.56
耐蝕性、強度はA
M-350より劣る
板金物には不可
要耐蝕性の場合
は要コーティング
アルミ箔テープ、ペーパー
コンデンサーリード線の接
着。鋳物ダイカストの巣
埋肉盛
アルミケーブル線の接続
に鉛錫ハンダの予備
ハンダとして使用

 特殊アルミ半田;
  EL-3・・・電球口金専用アルミット   SP-15・・・フィルムコンデンサー専用 (153℃)


アルミットの使い方
 アルミットによる接着は、 溶接 とも 鉛錫ハンダ付 とも 接着の原理 が違います。アルミット
 に適した使用法が大切です。接着作業を行う前に少し練習して下さい。接着の原理を守り作業
 に慣れれば、難しいアルミの接着も熟練します。
・・・と在りますが......。
 (主に AM-350 の扱い方を解説します。他の almit の使い方も ほぼ同様です。)

 AM-055 ( 注意 ; A2000系,5000系,7000系のアルミ材には使用できない )
  AM-055 はフラックスを必要とします。酸素アセチレンバーナーでフラックスを使用して、
  溶接と同じ様に御使い下さい。作業後はフラックスの洗浄が必要です。ロウ接後、温水・硝
  酸・弗酸の混合液で中和して下さい。 almit = 1kg につきフラックス 200g 使用。

 AM-350 ; カマボコ状 L=400mm,W=6mm,H=2.5mm,Weight=30g/1本
   ( 適合金属 ; 2S,24S,52S,75S,ヒドロ,シルミン,ラウタン他すべてのアルミ合金 )
  耐蝕性がすぐれ溶接に匹敵する強度をもち、350℃でフラックスなしであらゆる種類のアル
  ミ合金に強力に接着するアルミットの代表的なアルミハンダです。
  ・熱源には、都市ガスまたはプロパンガスのバ−ナ−で使用出来ます。 酸素アセチレン使
   用の場合は弱い炎。
  ・はんだ付けの際低温(350℃)でアルミニウムと完全な合金になる、共晶アルミハンダです。
  ・アルミニウムの表面を摩擦することでフラックス無しで容易に酸化膜を破ります。
  ・あらゆるアルミニウム合金、板材、型材、鋳物およびそれらの異質の材料の組み合わせの
   はんだ付けに適します。
  ・広い断面の突合せや合板状の接着や鋳物の分割鋳造の断面接着に適します。

  材 料
  ・都市ガスまたはプロパンガスのバーナー (コンプレッサーまたは足踏みフイゴのエア併用)。
   但し、酸素アセチレンの場合は弱い焔。
  ・石綿板 (断熱材として)、耐火煉瓦。
  ・ドライバー状の鉄ヘラ (長さ25〜30cm、直径3mm位;先を平らにする)。
  ・手袋、ヤットコ、ヤスリ、スチールウール。
  ・継手の設計に適した治具または其れらに代わるもの。

  作業法
  1. 図の様な基本的な接手を選択して下さい。複雑な接合は工夫して下さい。
  2. 接手によって必要な場所は開先をとって下さい。 又、接着部を特に洗浄する必要はあ
   りませんが、スチールウール等で磨くと接着がより容易に成ります。
  3. アルミは熱が逃げ易い金属ですから、ロウ付の際は裏に石綿板を置いて下さい。 万力に
   固定してロウ付する際は、石綿板を挿んで下さい。 こうすると熱逃げとアルミにキズが付
   き難く成ります。
  4. 治具または其れに代わるもので接着部を固定して下さい。

   接合方

  作業開始
  1. 左手にバーナー・右手にアルミットを持ち、接着部をバーナーで熱する。
  2. アルミットに直接熱を掛けずアルミットの先端で接着部を擦る。適温に成るとアルミット
    がアルミに引っ掛かる様に成り、接着部の温度で溶け始める。
  3. アルミットが溶け始めたら、熱を掛け過ぎない様に充分留意する。
  4. 接着部表面のアルミ酸化膜をアルミットの先で確実に摩擦していく。 温度を上げ過ぎる
    とアルミットの先端軟化の為・摩擦が充分行われず、之が原因で接着不良と成る。
  5. 上記加熱方法に不慣れの時は、鉄のヘラでアルミットをアルミ表面に摩擦して延ばして下
    さい。 ヘラの面が接着部に確実に接触する事が大切です。 V型、L型の場合は両面にヘラ
    の面を別々に添わせて摩擦して下さい。
  6. アルミ表面にアルミットとアルミ合金層が出来れば、其の上に必要な量のアルミットを溶
    かし込んで下さい。
  7. 溶かし込んだアルミットを手早くヘラの先でならし付けると、奇麗な仕上りに成ります。


 鋳物の断面接着

  作業準備
  1. 電気炉またはガスコンロ等の予熱装置。他に補助加熱用のガスコンロ。
  2. 接合部の両面を平面にして、面を確実に会わせる様にする。

  作業開始
  1. 接着物を電気炉またはガスコンロ等で 200〜250℃位で予備加熱します。
  2. 接着仕様とする片方をガスコンロの上に置き・接着面にアルミットを馴染ませ、バーナー
    で加熱し乍ら少し多めにアルミットを盛りつけます。
  3. 同じ方法で両面にアルミットを盛りつけた後、両面を合わせ再加熱します。
  4. アルミットが溶けて流れ出すのを確認して、上下の鋳物を 2〜3mm 左右に滑らせて面を
    合わせます。接着面からアルミットが流れ出ない様に、水平で作業します。
  5. ハミ出したアルミットはヘラか布で拭き取り、静かに放置して冷却します。
  ・鋳物の割れた凸凹面を付ける場合は、ワイヤーブラシで摩擦してアルミットの予備ハンダ
   を遣ると良い。広い面積のアルミ板の接合も同様。
  ・インローにパイプ等を接手に差込む場合は、前以て両面に予備ハンダしてから差込み、ア
   ルミットを流し込んで下さい。

 SP-27
  SP-27 はフラックスを必要とします。融点は270℃。鉛錫ハンダの様な用途をアルミに利用
  する場合に使用出来ます。 アルマイト、ゴールドメッキの種類によっては、直接・膜を破っ
  て接着する事も出来ます。
  1. SP-27 をアルミ板に付ける場合は、フラックスを接着部に塗っておいてアルミットを鏝で
    盛りつけていくと良いでしょう。
  2. バーナーで接合部を加熱し乍ら、ハンダにフラックスを乗せて接合部に差込むか、接着箇
    所によってはハンダとフラックスをセットしておいて加熱します。但し、フラックスに焔
    を直接あてるのは良くありません。フラックスは成る可く少量にしてロウ付の際・気化し
    てしまうか炭化の一歩手前で加熱を止めると、フラックスの硬化に依る腐食原因に成りま
    せん。
  3. 接着箇所をフラックスに浸漬してから SP-27 の溶けた槽の中に浸漬すると、メッキ状の
    ハンダ付が簡単に得られます。

 AM-022 ; カマボコ状 L=160mm,W=8mm,H=3mm,Weight=20g/1本
  AM-022 はフラックスは不必要です。鋳物の巣埋・肉盛りは AM-350 と同じ要領で遣って
  下さい。融点が200℃ですから温度を上げ過ぎない様にして下さい。ペーパーコンデンサー
  のリード線接着やアルミ箔等に使う場合は、電気ゴテ(100W 以上)で使用出来ます。 其の場
  合、母材の温度を上げる為に電気ゴテを押し付ける様にして作業すると良いでしょう。

  アルミ板どうしを接着する場合は 100W 以上のハンダコテでも難しいと思われますので、ガ
  スバ−ナ−の方が良いでしょう。ハンダを直接溶かすのではなく、アルミ板を熱してその温度
  でハンダを溶かし、アルミ酸化膜をアルミットの先端でこすって溶かしこんでください。

  鋳物のピンホール埋めを行う場合は、作業部をワイヤーブラシで擦り・其の上にアルミットを
  盛りつけ、余り溶融状態にせず・ザクザクの状態にしてヘラ等で撫で付けるとピンホールが埋
  められます。

  はんだ付け後 200℃ 以上の焼付塗装をする場合はアルミット AM-350 をご使用ください。


試しに アルミット AM-22 を使って タオル掛 を造る
 タオル掛
 何時かは造ろう と思っていた懸案の タオル掛
 アルミット AM-22 を使って造ってみた。目的と
 した使い方ではないが、練習の積もりで遣ってみ
 た。確かに低温で溶けるし 治具(ヘラ等)の使い方
 にも慣れれば、もう少し旨く出来そう。 流動性
 は AM-55 より劣り、濡れ性の少ない半田 模様。

 材料は手持アルミパイプ(20x40x2)とアルミアン
 グル(15x15x2)。アルミパイプは両短辺の耳を残
 しアールを付けて内曲・センターにて突付け。ア
 ンカー用アングルはチャンネル状にアルミロウ付。

 上図はロウ付け完了時と粗研磨時の状態です。
 アルミ表面が汚れているのは、ロウ材の中にフラ
 ックスが含まれている為か...?  下図は完成画像。



 粗研磨して判明したことだが、やはり完全には接合していなかった。 アングル接合の場合は2部
 材双方の接合面に予めアルミロウを施してあったので旨く接合出来た。
 結局、AM-55 にてロウ付遣り直したのが完成画像。

他のメーカーは如何に

 日本アルミット株式会社の外に新富士バーナー株式会社が在る。私は両者を相当量使ったが、今
 の処 アルミット に軍配を上げる。後者には小口販売で融点 380℃ が在るので捨てられないが...。

 最近、友人より KENTEX と云う会社を教えて戴いた。「くるまの工具やどっとこむ」を通じて
 「アルミ溶接棒 ウェルド君 YK-388」を売り出した。 未体験なのでコメント出来ないが、此の
 Web ページの有益な点は、アルミロウ付の作業の写真・動画が在ることだ。 一見の価値有り。

 気のせいか、最近「アルミロウの世界も賑わってきた」ことは喜ばしい限りだ。

自転車の製作

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