杜撰な遺骨収集事業
登山家・野口健氏の小誌への呆れた反論
厚生労働省のフィリピンにおける遺骨収集事業に、重大な疑惑のあることを小誌は三月十八日号で伝えた。NPO法人「空援隊」(倉田宇山事務局長)が集めた「英霊の遺骨」の中に、フィリピン人の骨が相当数含まれている可能性が高い、という遺族たちからの疑問を、現地取材で検証したものだが、これに登山家の野口健氏が「悪意に満ちた記事」と噛み付いたのだ。
空援隊の理事を務める野口氏は自身の公式ブログに二日にわたって、その「悪意」についての持論を展開。
〈今までにも「空援隊がご遺骨を焼骨した火でブタを丸焼きにして宴会を行っていた」などといったデマ情報が流されたこともありました〉
〈フィリピン人はお金さえ払えば墓荒らしを行うといった今回の記事はフィリピン人に対する侮辱です〉
〈海外での遺骨収集は相手国との交渉が極めて困難です。「遺骨収集をさせる換わりにお金を払え(中略)」などと具体的に要求してきています〉
〈空援隊はゲリラや山賊から脅迫されながらも活動を続けてきました。(中略)私たちが射撃訓練を受けているのも遊び感覚ではなく覚悟を決めた上での訓練です〉
野口氏は、遺骨収集に銃を携帯して乗り込んでいるのだろうか。とにかく、自身を「空援隊」そのものとして熱く感情をぶつけている。
しかし、ブタの丸焼きどころか、小誌は「金さえ払えばフィリピン人は墓荒らしを行う」などとは指摘していない。国家事業にも拘わらず、遺骨の出所が検証できないような状態で収集されている現状に大きな問題がある、と指摘しているのだ。野口氏はこの点には少しも答えていない。
野口氏はブログで、空援隊が遺骨収集を成功させると遺族たちが立場を失うと忠告されていた、とも書いている。
遺骨収集歴約二十年の亀井亘さん(67)は悲しそうにこう言った。
「私たち遺族一人一人は、人には言えないような苦労をしてこれまで生きてきた。そして、父や戦友の遺骨の大切さは誰よりも身に染みている。本当の遺骨なら、これほど嬉しいことはないのです。一欠けらも残さず速やかに持ち帰って、日本のお米を(供えて)食べさせてあげたいんです。何が立場ですか。バカにするのもいい加減にしなさい」