シノギは「学校」 黙々と働くおっちゃんはヤクザだった
産経新聞 2月26日(日)20時13分配信
|
拡大写真 |
大阪市を拠点とする山口組直系組織の事務所を捜索する大阪府警の捜査員=大阪市中央区(写真:産経新聞) |
指定暴力団山口組系組員、西沢進容疑者(66)=同市天王寺区堀越町=が現役の暴力団組員であることを隠し、市立中学校の廃品回収を請け負ったとして、有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕された。大阪府警の調べに、「廃品を得るため、実在しない架空のリサイクル会社の印鑑を使い、契約書を交わした」と供述した西沢容疑者はどのようにして学校を信用させたのか。
■「誠実」な廃品回収業者
同校の男性教頭が西沢容疑者と知り合ったのは、平成21年のことだった。当時、同市住之江区の市立中学校に勤務していた教頭は、周辺校から「電話をかけるとすぐに廃品回収に来てくれるので助かる」などの評判を聞き、西沢容疑者が経営しているとされるリサイクル会社に電話した。西沢容疑者は、「すぐに行かせていただきます」と丁寧に応じたといい、誠実そうな印象を受けたという。
まもなくして、西沢容疑者は月に数回、同校を訪れるようになった。作業着姿の西沢容疑者はいつも1人で軽トラックに乗り、正門から入った後は、教頭の誘導でごみ置き場に向かい、黙々と廃品を運搬したという。西沢容疑者はあいさつ程度しかやり取りはしなかったが、教頭は「寡黙で温厚な雰囲気だった」と話す。
2年後、教頭は港区の別の市立中学校に赴任するが、前任地での好印象から、廃品回収は再度、西沢容疑者に依頼。西沢容疑者は足しげく、同校にも通い始めた。
同校では契約書を正式に交わすことになり、西沢容疑者が持参した契約書に校長がサインした。書面には「契約期間は平成23年9月1日〜24年8月31日までとする」や「業務は無償で行う」などの取り決めのほか、「(西沢容疑者側が)市暴力団等排除措置要綱に基づく入札等除外措置を受けた時は契約を解除する」と明記されていたという。
教頭は、「市は、廃品回収業者と契約をする際、書面で取り交わすように指示しているため、特に疑問には思わなかった。暴力団に関する注意書き付きの契約書を持ってきた本人が、まさか組員とは考えもしなかった」と話しており、学校側を信用させる狙いもあったとみられる。
■巧妙に身分を隠す組員たち
確実に教頭らの信頼を得ていった西沢容疑者。だが、その裏の顔はれっきとした組員であり、府警によると、学校から持ち出された廃品は業者に持ち込まれ、換金していたとみられている。あるリサイクル業者は「古紙や空き缶などの取引は1キロ当たり約5〜6円程度で、微々たるものでしかないが、学校からは多くの古紙が出るため、まとまった数がそろう。業者に売却すればそれなりの収入になったのでは」と分析する。
実際、捜査関係者によると、西沢容疑者は月に50万円近く売り上げていたこともあり、手に入れた資金は生活費のほか、一部は所属する暴力団に流れた可能性もあるという。
巧妙に身分を隠し、犯罪に手を染める組員は昨秋に全国で出そろった暴力団排除条例の施行後も後を絶たない。昨年12月には、イタリア料理店で働いていると偽り、信販会社からクレジットカードをだまし取ったとして、大阪府警が詐欺容疑で山口組の直系組長を逮捕した。
また、今年1月には、生活保護費約1千万円を不正受給したとして、府警が同容疑で、山口組系組長を逮捕。組長は「金はあればあるほど良かった」などと供述しており、平成18年3月から21年7月にかけ、マージャン店の運営などで収入があったにもかかわらず、組員であることを隠して生活保護費を受け取り続けていたという。西沢容疑者も、これらのケースと同じく、組員であることを全く感じさせない素振りで学校への出入りを繰り返していた。
暴力団情勢に詳しいあるジャーナリストは「暴排条例の施行で組員の収入源はか細くなっている。瀬戸際に追い込まれた状況が今後も続くため、シノギを得ようとして、身分を偽ってでも罪を犯す組員も当分はなくならないだろう」と警鐘を鳴らす。
■約50校もの「取引先」
しかし、西口容疑者の悪行はまもなく捜査当局の知るところとなった。府警捜査4課は2月16日、有印私文書偽造・同行使容疑で西沢容疑者を逮捕。その日のうちに、西沢容疑者が所属する兵庫県姫路市の暴力団事務所やその上部団体にあたる大阪市内の山口組の直系組織など数カ所を家宅捜索し、西沢容疑者が廃品回収の際に使用したとみられる回収先のリストも押収した。
捜査関係者によると、このリストには府内の小中学校を中心に約50校もの名前が網羅されていたといい、これらの学校から廃品をかき集めていたとみられる。さらに、西沢容疑者は軽トラックを使用して各校を回っていたにもかかわらず、運転免許を所持していなかった上、車検証の交付も受けていなかったことも判明。同課は、道交法違反(無免許運転)や道路運送車両法違反などの容疑でも事情を聴いている。
図らずも組員のシノギの舞台となった同校。関係者を襲った衝撃はあまりにも大きい。
「生徒たちに危害がなくて本当に良かった」と教頭は胸をなで下ろしながら、こう続けた。
「西沢容疑者は電話1本で資源ごみを取りに引き取りに来てくれるので、重宝していたが、まさか組員だったとは夢にも思わなかった。ショックは簡単には消えない」
【関連記事】
賄賂でハワイ旅行の校長一家 修学旅行汚職事件
隣人への「恐怖心」から…母親を殴り殺した男女3人
18歳・女子高生はなぜガールズバーで死んだのか
デリヘル女性代表激白「黒い交際ありません」
人気アイドルとヤクザ 実は“近い”関係
1回生議員130人 首相新たな「敵」
最終更新:2月26日(日)20時13分
主なニュースサイトで 交通違反 の記事を読む
この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます
- オセロの中島さんらに立ち退き命令 マンション家賃未払いで東京地裁写真(産経新聞) 2月28日(火)13時22分
- 国のやり方恐ろしい…意見交換会欠席の双葉町長写真(読売新聞) 2月26日(日)21時43分
- 米国でまた韓国人卑下、今度はバーガーキングで=韓国メディア(サーチナ) 2月27日(月)9時48分
- 「情報来ない」「もういい」…菅氏の混乱指摘(読売新聞) 2月28日(火)9時13分
- 「裁判、めちゃくちゃ」=死亡男性の母、遺影持ち法廷に―奈良警官発砲(時事通信) 2月28日(火)19時10分