ニュースランキング

'12/3/1

震災貸与のフェリー運航終了




 江田島市が東日本大震災の津波で船を失った大島汽船(宮城県気仙沼市)に無償貸与、離島の大島と本土の気仙沼港を結んだフェリーが29日、運航を終えた。物資や仮設住宅の資材を島に運び、人の行き来を支えた「ドリームのうみ」(397トン)。島の人々は苦しかったこの1年を思い、生活再建に寄り添った船に感謝した。

 「のうみがなかったら、どうなっていたことか」。スーパー経営者の千葉秀樹さん(39)は声を詰まらせた。震災後しばらくは商品を搬入するすべがなかった。

 数軒しかない島のスーパー。わずかな食料や日用品を求めて客が押し寄せた。人々の困る姿を目の当たりにしながら、期待に応えられないのがもどかしかった。千葉さんは「仕入れが安定したのはのうみのおかげ」と白い船体を見やった。

 津波が島をなめた昨年3月11日、大島汽船の7隻は航行不能になった。島は孤立。がれき搬出、復旧に必要な物資の搬入もままならなかった。窮状を知った江田島市がのうみを貸与し、同4月27日に就航。以来、大島・浦の浜港と気仙沼港を1日8往復、1日当たり約800人、約200台の車を運んできた。

 吉田ヨシ子さん(66)ものうみで気仙沼本土を訪れた時のことを忘れない。福祉ボランティア仲間と再会、「生きててよかった」と抱き合った。「おかげで多くの笑顔に再会できました」と涙ぐむ。

 のうみは午後7時前に浦の浜港に接岸、約10カ月間の務めを終えた。2日に大島を出港し、江田島に向かう。

【写真説明】のうみへの感謝の思いを大島汽船の社員(左)に語る吉田さん




MenuNextLast