震災がれきで反対続々「自然守って」

2012年2月29日 09時36分
(13時間47分前に更新)

 「沖縄の自然を守ってほしい」「健康被害が心配」―。仲井真弘多知事が東日本大震災で発生した震災がれきの受け入れに前向きな姿勢を示したことを受け、県には28日、受け入れに反対する意見が次々と寄せられた。

 その数、86件。子どもを持つ親や沖縄に避難してきた被災者、放射能汚染の不安から沖縄県産の食品を取り寄せて生活する県外在住者らから、中には涙声で電話があった。県担当者は「批判というより切実なお願いという印象」と話し、戸惑いを隠せない。

 県環境整備課によると、28日午後6時半までに寄せられた意見は電話78件、メール7件、ファクス1件の計86件で、内訳は県内48件(約56%)、県外32件(約37%)、不明6件(約7%)。すべて受け入れ反対を求める内容だったという。

 最も多かったのは「沖縄の自然環境を守ってほしい」で、県産農産物や観光への影響を心配する声も。また、沖縄へ避難している被災者は、原発周辺で原因不明の鼻血に悩んだ経験などを踏まえ「震災がれきは低レベルの放射性廃棄物といわれているが健康被害がはっきりしていない」と不安を打ち明けたという。

 震災がれきを全国で処理する「広域処理」そのものに反対する声も多く、「費用をかけて離島県の沖縄へがれきを運ぶより、直接被災地に寄付すべきだ」「今必要なのはがれきよりも住民を受け入れる支援ではないか」などの指摘があった。

 一方、受け入れを検討する姿勢を示した南風原町には「反対」とする13件のメールや電話が、那覇市にも数件の意見が寄せられた。

「情報が不足」首長慎重

 「国や県からがれきの安全性や処理についての十分な情報提供もない中、判断することは難しい」―。東日本大震災で仲井真弘多知事が、がれき受け入れ検討の方針を野田佳彦首相に伝える一方、実際に処理するにあたり、判断を求められる首長からは、国の対応への不信感や情報不足に戸惑う姿も浮かんだ。

 処理を「検討する」と答えた島袋俊夫うるま市長は「国の事後対応のまずさが報道されている。万が一、受け入れ先で汚染されたら、その地域の物全てが駄目になりかねない」と慎重な姿勢を崩さない。

 「すぐに回答できない」とした古謝景春南城市長は「国の安全基準は信頼できない。がれきにしても第三者機関で調査し、専門家で安全基準を定めるべきだ」と国への不信感を募らせる。「分からない」と回答した儀間光男浦添市長も「原発は安全だといわれながら放射能漏れを起こした。安全神話が崩れ、福島が犠牲になったのは人災だ」と安全性の議論が深まることを期待する。

 検討自体には前向きな翁長雄志那覇市長も「県からのがれき処理をめぐる情報もない今、すぐ判断することは私にはできない」と十分な説明を求める立場だ。

住民に判断材料を
稲垣暁(沖縄大学地域研究所 特別研究員)

 政府が打診してきた場合、県は震災がれきの受け入れを検討する、としている。応分に負担するという考え方ではあるが、汚染状況や量、種類のほか、県民や環境にどのような影響、負荷を与えるのかなどの情報、分析がなく、現段階で是非は判断できない。

 放射能汚染は非常に微妙な問題だ。原発事故後、国の情報公開のあり方や信ぴょう性について、国民には不信感が募っている。国は「安全」だけでなく客観的、科学的に信用できる情報を公開すべきだ。県知事や市町村長も独断ではなく、住民に判断材料を提供した上で、慎重に決める必要がある。(談)

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