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放射能と向き合う−仙台圏(2)調べる/自分のできる範囲で
 | 公園で空間放射線量を調べるアネモネさん。芝生の上は土の上よりも少し高い値を示すことが多いという=仙台市泉区 |
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<自前で測定、公表> 「不安がないわけではないけど、正しい情報に触れれば笑って暮らせるかもしれない」 自前の線量計で測定した身近な空間放射線量、公表されている魚の放射能汚染状況のデータを調べるなどしてブログに載せているのは、仙台市泉区のハンドルネーム(インターネット上の名前)アネモネさん。1歳の長男の子育てに追われる20代の主婦だ。空間線量は昨年8月から本格的に測り始めた。 「子どもがまだ小さいこともあって、原発事故後は放射能の危険性を強調する情報を見るたびにびくびくしていた」と振り返るアネモネさん。「自治体が発表する放射能情報を正しく理解できないとますます不安になるので、無理のない範囲で、できることから取り組んでいこうと考えた」 きっかけは昨年6月、機会を得て知人とともに東北大の放射性物質の測定機器を見せてもらったことだった。「臆測ではなく、正しい値を知るとともに、冷静に判断することが大切だと実感した」という。 例えば、花こう岩を使った建物内では、空間放射線量は周辺よりも高い値を示す。微量の放射性元素が含まれているためだ。それを知らないと「建物が汚染されている」と誤解してしまう。 「ごみ処理施設でがれきを焼却すると、煙とともに放射性物質が拡散する」といううわさをネットで読んだ際には、仙台市内のごみ処理施設の見学を申し込み、担当者から事実ではないと説明を受けた。 豚肉や鶏肉を選ぶときは、与えている餌を公表しているもの、または放射性物質に関する検査が済んだものを購入するよう心掛けている。 「いたずらに怖がるつもりはない。でも、データがないと自分なりに判断できない」とその重要性を強調する。
<県の対応に不満> だからこそ宮城県の対応には不満がある。県の放射性物質に関する検査体制が後手に回っている印象をアネモネさんは抱いているからだ。 県が放射性物質の精密測定器3台をそろえて農林水産物などの検査を自前で始めたのは、原発事故から10カ月後の今年1月。原発事故収束宣言(昨年12月)以降も、隣の山形市内では微量とはいえ放射性物質が降下物として観測されているのに、宮城県内では震災被害を理由に定期的な測定が行われていない。降下物を測定していないのは全国で宮城県だけだ。 「もっと積極的に放射性物質の測定をして公表してほしい。データが少ないと疑心暗鬼に陥ってしまいかねない。福島の隣県という近さを考慮すれば、検査体制の充実は必要だと思う」とアネモネさんは訴える。
2012年02月29日水曜日
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