人間ドックが「二次がん」を引き起こし、肺がん検診を受けると寿命が短くなる。医学部教授、有名医師、医療ジャーナリストが敢えて指摘する。
「肺に影が」「胃の数値に異常が」そんな所見が出て、一瞬頭が働かなくなった経験はないだろうか? 精密検査の結果を待つ精神状態は思い出したくもないはずだ。このストレスこそ、病気の源である。
検査で体調がおかしくなった
「老化をあるがままに受けいれ、痛み、苦しみがある時以外は、病院には近づかないほうがいいのではないか。私はそう考えています。現在71歳ですが、11年前の還暦の時に妻ともども決心して、健康診断やら人間ドック、血液検査さえもすべてやめました。そして、そうした検査のストレスがいかに重かったかということに気づいたのです。私たちの日常は、とても穏やかなものになりました」
拓殖大学学長で経済学者の渡辺利夫氏は、柔らかい口調でそう話す。愛煙家の渡辺氏は、40代、50代の頃は年に1~2回、人間ドックを受けていた。だが、ある時ふと、そのおかしさに気がついたという。
「たとえば、検査で肺に異常な影があると言われたとします。その後、細いファイバースコープを飲まされて、生検(生体組織診断。患部の一部を切り取って調べる検査)があります。こうした検査自体が苦しいし、その予後はもっとつらい。
結果が出て再検査、また生検をして、さらに結果を待つ。働き盛りの人でも、この間、生きた心地のしない時間を過ごして凄まじいストレスを受け続けるのです。
年をとれば、検査で何らかの異常値は必ず出ます。加齢とともに、異常値の出る頻度は確実に高まっていくわけですから。症状もないのに検査によって病気を探り出すような愚かなことはやめようと決めたのです。やめれば穏やかな"身体感"に必ずや目覚めますよ」
渡辺氏と同じように、早稲田大学教授の池田清彦氏(62歳、生物学)も「検査は不要」という信念がある。
「40代の頃、初めて内視鏡で胃の検査を受けさせられ、50代でも便潜血検査で陽性だからというので、胃がんやら大腸がんの検診を受けさせられた。
がんはなかったのですが、そういった検査そのもので体調を崩したんです。後で、『何もないのにオレの腹はかきまわされたのか』と腹立たしくなってね。
そうやって具合が悪くなってからかな、門外漢だった医療のあり方とか、余計なことを考える余裕ができたのは。それで、いろいろと調べたり考えたりするうちに検査そのものにより懐疑的になって、一切受けなくなったわけです」
がん検診で寿命は延びない
日本の年間死亡者数は約114万人。そのうち約34万人が「がん」で亡くなっている。無論、日本人の死因のトップだ。それだけに、医学会や医療行政も、がんの早期発見、早期治療を至上命題に掲げ、一般的な健康診断から始まり、人間ドック、がん検診を奨励している。脳ドック、メタボ健診なども一般的になった。
- 顧客、上司、妻は何を考えているのか 「相手の心を読む」その方法教えます (2012.02.29)
- 美食は食道がんに通ず、のか? 飲みすぎ、食いすぎ、手術がコワイ人、必読の書「死なない練習」の著者・長友啓典が語る、「食道がん、その後の経過報告」インタビュー5 (2012.02.26)
- 獨協医大・永井伸一名誉教授「子供をダメにする」親の研究 3000人の親子を聞き取り調査して分かったこと (2012.02.20)
- 美食は食道がんに通ず、のか? 飲みすぎ、食いすぎ、手術がコワイ人、必読の書「死なない練習」の著者・長友啓典が語る、「食道がん、その後の経過報告」インタビュー4 (2012.02.19)
- 岡田正彦・新潟大学医学部教授 長生きしたければがん検診は受けるな (2012.02.15)
- 岡田正彦・新潟大学医学部教授 長生きしたければがん検診は受けるな (2012.02.15)
- 大研究シリーズ 早期発見が命を救う ああ、あれが病気の始まりだったのに 予兆はあったのに、多くの人が見逃してしまう (2011.08.31)
- 大研究シリーズ 部位別がんの始まりと終わり 「助かるがん」「助からないがん」「再発と転移」 (2011.09.02)
- 完全保存版 病気の値段 (2011.01.18)
- 悪い病気には必ず兆候がある (2010.09.15)
-
World Biz News英名門サッカーチームの監督に学ぶ"マネジメント"の極意 (2012.02.29)
-
賢者の知恵顧客、上司、妻は何を考えているのか 「相手の心を読む」その方法教えます (2012.02.29)
-
-
-