日本が環太平洋経済連携協定(TPP)に入り、コメにかけている関税がゼロになった場合、海外産米が最大で年400万トン輸入される可能性があるとの試算を、九州大学大学院の伊東正一教授がまとめた。
伊東教授は食料需給問題を専門とし、世界の食料事情に詳しい。現在、国産米は60キロ(玄米)あたり1万5千円程度だが、関税がなくなれば、米国産の「コシヒカリ」が7千円前後、同国産の「カルローズ」が5千円程度で入ってくる可能性があるという。
日本人が食べる短中粒種のコメは、米国では年150万トン、ベトナムでは年1万トン生産しているが、5年程度で日本向けに品種を変えたり、生産体制を整えたりすることを想定。米国から300万トン、ベトナムから100万トンの計400万トンのコメが入ってくるとした。
400万トンは、日本の年間コメ消費量の半分に相当する。伊東教授は、日本の中小規模のコメ農家の経営は立ちゆかなくなり、採算を度外視して趣味でコメ作りをする兼業農家と、一部の大規模農家のみになると指摘。一方で、「コメが安くなり消費者にはメリットがある。多くの輸入ルートを確保した方が、食料不足のときに安定的に海外から調達でき、食料安全保障上もいい」と話している。