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きょうの社説 2012年2月28日
◎志賀と御前崎の協定 防災ノウハウの共有に一役
志賀町と静岡県御前崎市が原発の事故を含めた災害に関する相互応援協定を結んだこと
は、原発が立地する自治体同士で互いの資機材や経験を生かすことができ、住民の安心につながる。協定締結を機に、行政の協力関係を住民同士の交流にも広めて、いざという時の備えを実のあるものにしてほしい。原発については国が監督権限を持ち、自治体が直接、関与できる分野は限られているが 、立地自治体が手を結ぶことによってノウハウや情報の共有が進み、原子力災害の対応力が向上するだろう。連携が他の立地自治体にも広まれば、国や電力会社に対する発言力も高まっていくのでないか。 志賀町と御前崎市が結んだ協定では、原子力災害や大地震、津波などが発生した際に、 避難住民の受け入れ、物資や資機材の提供、職員の派遣などで互いに協力することになっている。原発が立地する自治体として双方とも原子力災害に対する資機材を備えており、協定締結には原発事故の際に必要なものを補完し合えるという利点がある。地理的に見ても日本海側と太平洋側に分かれているため、津波や地震の際に協定が効果を発揮する可能性が高い。 中部電力浜岡原発がある御前崎市は東海地震の想定震源域にあり、文科省の評価では、 2011年から30年以内にマグニチュード8程度の地震が発生する可能性は87%とされた。地震、津波に対する備えが切実な課題となっており、その分、協定締結の重みが増す。志賀町は協定に盛り込まれた内容を確実に実行する態勢が求められるだろう。 原子力災害に対する応援協定をめぐっては、原発が立地する14道府県が2001年に 相互協定を結び、電力会社など12社も2000年に協力協定を結んでいる。災害が発生した時はそれぞれの協定に基づいて主管県や幹事社が応援の調整をすることになっているが、原発が立地する市町村同士ではこうした協定の締結は進んでいない。東日本大震災で地震と津波が絡む原発事故が現実に発生した事態を受けて、市町村レベルでも広域で連携を密にする協定や仕組みを検討していい。
◎G20共同声明 求められる欧州の覚悟
欧州の財政危機を主要議題とした20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議
は、欧州の自助努力を強く迫る共同声明を採択し、危機拡大に備える国際通貨基金(IMF)の資金増額は4月に結論を持ち越した。G20声明は、欧州連合(EU)のユーロ圏諸国が自前の金融安全網の拡充を3月末までに決断するよう求めているが、資金面の追加支援措置だけでなく、欧州債務危機克服の抜本策とされるユーロ圏の「財政統合」にまで踏む込む覚悟が問われている。ユーロ圏諸国は、今回のG20会合に先立って財務相会合を開き、財政破綻状態のギリ シャに対し、1300億ユーロ(約13兆7千億円)の第2次金融支援を行うことで原則合意している。これにより、ギリシャは3月20日に迫っている約145億ユーロの国債償還資金を確保でき、当面、無秩序なデフォルト(債務不履行)は回避される見通しとなっている。 欧州中央銀行(ECB)が大量の資金を金融市場に供給していることもあって、スペイ ンやイタリアの国債の金利も安定し、欧州危機はひとまず小康状態を保っている。しかし、金融支援と引き換えに財政を厳しく監視されるギリシャは一方で、緊縮財政によるさらなる景気悪化と財政赤字拡大の悪循環に陥る懸念も強い。 ユーロ圏の債務危機国を支援する欧州金融安定化基金と、その後継の新安全網である「 欧州安定メカニズム」の資金規模の拡大だけでなく、経済成長を支える金融政策なども必要である。 さらに重要なことは、財政危機の根本的な問題を解決し、ユーロを守る欧州の覚悟であ る。危機の根底には、通貨を共有しながら各国の財政政策はばらばらで、格差が大きいことがあり、抜本的対応策として、「ユーロ共通債」の導入などユーロ圏の財政統合が欠かせないとみられている。 財政統合は時間のかかる課題であるが、その覚悟を示すときではないか。「歴史上、財 政や税務、国債を管理する省庁のない通貨が生き残った例はない」という警告に耳を傾けたい。
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