つなぐ 希望の木
災難を乗り越えてきた木々を、都内に訪ねた。
【放送芸能】転換期の米アカデミー賞 仏「アーティスト」作品賞 映画への愛を評価第八十四回米アカデミー賞に二十六日(日本時間27日)選ばれたフランス映画「アーティスト」は、今どき異色の白黒サイレント。銀幕のスターが恋人に支えられ、復活を遂げるラブストーリーだ。今回の選考結果を映画評論家の矢崎由紀子さんは「映画への愛情が感じられるのが良い作品という、アカデミーの意思を感じる」と語っている。 (小田克也) 作品の舞台は一九二七年、黄金期のハリウッド。サイレント映画の大スター、バレンティン(ジャン・デュジャルダン)は新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)に恋心を抱く。 サイレントからトーキーへの移行期。ペピーはスターへの階段を駆け上がる。だがバレンティンは、自分は芸術家(アーティスト)だと、サイレントに固執し、落ちぶれていく。ペピーはそんな彼にある提案をする…。 絶望したバレンティンが、自作のフィルムに火を放つ場面が印象的だ。むろん映画へのオマージュで、「限りない映画愛」の裏返し。微妙な白黒の陰影、時折入る字幕…。映像やせりふのあり方も考えさせられる。監督はミシェル・アザナビシウス。 ■ 「映画愛」がアカデミーから評価されたのは、時代の変化も無関係ではあるまい。コダックの経営破綻が示すように、フィルムからデジタルへの転換が進み、3D上映が急増。コンピューターグラフィックス(CG)も進歩し、生身の俳優に取って代わる勢いだ。 映画を取り巻く環境が変わる中、映画とは何か、再定義を迫られているといえる。そうした状況でアカデミーは、「映画への愛情が感じられるのが良い作品」と、メッセージを発したといえそうだ。 「映画を愛する気持ちがあれば、映画があなたを救ってくれる。『アーティスト』は、そんな映画愛が根底に流れている」と矢崎さん。 スティーブン・スピルバーグ監督の「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」が、アカデミー賞のアニメ部門にノミネートされず、周囲を驚かせた。俳優の演技を撮影してCG化する「モーション・キャプチャー」を最終的には実写に近いと見なしたようで、矢崎さんはここにもアカデミーの再定義の意思を感じるという。 ■ 今回は、アカデミー会員が純粋に気に入った作品を選んだ、という言い方もできる。矢崎さんは「作品賞はじめ、デュジャルダンが主演男優賞を、アザナビシウスが監督賞を受賞し、『アーティスト』が主要賞を総なめにしたのは意外。二人ともハリウッド映画に貢献してきたわけではない。その意味で会員は、しがらみや貢献度ではなく、いいと思ったものに投票した。昨年、感じた傾向が一段とはっきりした。歓迎すべき方向だ」と話す。 純粋にいいと選んだのが、映画愛を感じさせるシンプルな「アーティスト」。四月七日、シネスイッチ銀座など全国で公開される。 PR情報
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