理事長メッセージ

「福島原発事故独立検証委員会」(Independent Investigation Commission on the Fukushima Daiichi Nuclear Accident)は、このほど私たちが設立した日本再建イニシアティブ財団の最初の、そして最大のプロジェクトです。
ご承知のように日本政府は、福島原発事故調査委員会(”事故調”)を発足させておりますが、私どものこの”民間事故調”は、政府とは別の、独立した立場から、事故の原因と事故後の被害の要因の摘出、被害拡大防止の失敗の本質、それら全体の構造的、歴史的背景の分析などに切り込みたいと念じております。
私たちは、政府の事故調査委員会が公正かつ厳格な調査報告書を提出することを期待しています。同時に、私たちの報告書では、政府の報告書(中間報告書)の評価をも行うことにしています。

報告書は、日本版に関しては来年春、できれば2012年3月11日までに刊行したいと思っています。英語版の出版は来年夏を予定しています。

私たちは、福島第1原発事故に関する”民間事故調”の歴史的意義を信じております。
その理由は、次のような点にあります。

  • 世界にとって普遍的な挑戦でもあるこのような巨大技術の事故と被害を専門的知見によって調査、検証し、そこから教訓を学ぶ。それは、現代の世代の将来の世代への大きな責任である。
  • 公共政策の遂行と政府のパフォーマンスの検証と評価を、政府からも、業界からも、政治からも独立した民間の立場で行う。それは、健全な民主主義の発展にとって欠かせないオーバーサイト(監視・監督)機能を強化することにつながる。
  • この事故・被害は単なる原子炉とプラントの技術的かつ運用上の破綻にとどまらず、企業、自治体、政府、さらには戦後の日本人のモノの考え方に及ぶ「ガバナンス危機」でもある。
    その点の検証をも的確に行い、教訓を導き出すことが、今後の日本のエネルギー政策、安全保障政策、そして、国家統治、さらにはリーダーシップといった「国のかたち」の再構築にとって重要である。
  • 私たちの報告書を世界の知的共有財産に登録し、今後の知的、政策的なレフェレンスとする。そのために、報告書を英語で世界に発信する。報告書作成に当たっては、世界のこの分野での有識者を招き国際助言チームをつくる。彼らのコメントを報告書の内容に織り込むとともに、そのコメントそれ自体も報告書に載せる。
  • 報告書発表後、世界の影響力のある大学・シンクタンクと提携し、アドボカシーに努める。

幸いなことに、私たちの”民間事故調”の委員には、各界でもっとも尊敬されている専門家の方々に参画していただくことができました。
報告書のドラフトを起草するワーキング・グループ(WG)には、それぞれの分野を研究し、取り組んできた研究者、弁護士、ジャーナリストに加わっていただいています。

調査するうち、次から次へと疑問が浮かんできます。まだまだ闇の部分もたくさんあります。
それらを解明する上で、これはという情報や資料やヒントを市民のみなさまに提供していただきたい、との思いから、このウェブサイト内に情報提供のための民間事故調のページを立ち上げました。ぜひ、ご支援いただければと思います。

福島原発事故独立検証委員会
プログラムディレクター
船橋 洋一
日本再建イニシアティブ財団理事長