エジプト:デモ死者7人に 大統領派が発砲
【カイロ樋口直樹】エジプトの首都カイロでは3日、ムバラク大統領の即時退陣を求める反政府勢力と、大統領支持派による「市民同士」の衝突が沈静化の気配を見せず、緊迫した局面が続いている。前日には介入しなかった国軍が双方を分ける「緩衝地帯」を設け、事態の沈静化に乗り出したが、大統領支持派はこれを突破した。イスラム教の金曜礼拝がある4日には、反政府勢力が各地で再び大規模デモを計画している。
大統領支持派は3日午後、ナイフなどで武装して、反政府勢力が集まるカイロのタハリール広場に参集。国軍が設けた約80メートルの「緩衝地帯」を突破した。
ロイター通信によると、反政府勢力は大統領支持派の中に警察や与党関係の身分証保持者がいたとして120人を拘束した。
内務省は警察の関与を否定している。しかし、軍出身のシャフィク首相は3日、国営テレビで衝突を「甚だしい間違い」と謝罪。経緯などについて調査を約束し、「誰が背後にいるのか明らかになる」と述べた。
英BBCは3日、エジプト退役軍人の話として、衝突がこれ以上エスカレートすれば「軍は大統領支持派に銃を向ける」と伝えた。
ロイター通信によると、2日から3日にかけて少なくとも7人が死亡。3日未明には大統領支持派が発砲する事態に発展した。
毎日新聞 2011年2月3日 22時10分
http://mainichi.jp/select/world/news/20110204k0000m030104000c.html
今日は、この記事を題材に色々と考えてみようかと思います。それにしても、かなり大変な事態である事だけは確かですよね。アメリカや中国の記事だけでなく、他の国の記事でも基本は”世界は繋がっている”です。
本題に入る前に…。昨日のブログで敢えて取り上げなかった事柄が有るので、少し補足をしてみようかと思います。
それは、財政再建を唱える方が一人残らず口にする話題…”増大する社会福祉費用”です。確かに、この話題を避けたままでは先に進めない事も事実です。
そして、財務省が社会福祉費用を心配して消費税アップを望んでいるというのも事実でしょう。しかし、社会福祉費用を心配して税金の事を考えている財務省に対して”悪”のイメージを貼り付ける事が出来ない事も真理だと考えます。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/011.htm
このグラフからも分かりますが、消費税は安定的に継続して税収が見込めます。逆に所得税に関しては景気に大きく影響されるのも事実です。
ならば、私の考え方は何かと聞かれたなら「消費税アップは必要」という考えになります。ただし、それは「所得税の減税とセットにする」というのが現時点での私の考えです。
消費税アップのメリットは何と言っても安定的な税収確保です。しかし、増税は景気に対して非常に悪い影響を及ぼします。
なら、不景気でも安定的に税収の見込める消費税の割合を上げる代わりに所得税を下げて国民の理解を得ようとするのが最も合理的だと考えているのです。
所得税を下げて消費税を上げるメリットとして考えられるのは
・不景気でも安定した税収が見込める
・景気が良くなれば税率は低くても所得税の税収は増える
・セットにする事で景気や国民感情に対する悪影響を最小限に出来る
・不公平な外国人優遇の確定申告が少しは改善される
・脱税の件数が減る(と良いな~)
こういう事になります。ただ増税だけをすれば誰もが反発します。
日本人は馬鹿ではありません。また弱者に対しても薄情でも有りません。ちゃんと説明して納得して貰えれば一番私達国民が受け入れやすい、そして将来に対しての不安解消にもなると考えているのです。
中には「国債をジャンジャン刷って公共事業をすればよい」といった過激な事を述べる方も居られます。理屈は分かりますが、私は反対です。
確かに大量に国債を刷って日銀に買い取らせる事で借金を無かった事にするというのも理論上は有ると思いますが、それをしてしまえば「何の為に小泉元総理が郵政改革をしたのか」という事が分からなくなります。
公務員が「扱うお金は税金なんだ」、「ムダにしてはならない」と意識改革出来たのは無限にお金を生み出す打ち出の小槌として考えていた郵貯が公務員の手を離れて民間に移行したからです。
”第二の打ち出の小槌を作り出してはならない”と私は思います。
では、本題に戻ります。この日本から遠い地で起こったデモですが、対応を間違えると日本は困った事態になってしまいます。
結論は「民主党は何もするな」なんですが、それでは話が進まないので、もう少し考えてみましょう。
地図を見れば分かり易いですね。地図にも印を付けたので一目瞭然ですが、最も懸念されるのは”スエズ運河”と”イスラエル”の存在です。
少し脱線しますが何故、国境線がこんなに綺麗な直線なのでしょうね。誰かが人為的に引いたという事以外には考えられませんよね。
誰が国境線を引いたのかは誰もが知っていますよね。欧米の人間です。
本当に何処にでもクビを突っ込んでは”美味しい所”だけを掠め取ろうとする欧米のやり方を何故もっと世界中で非難しようとしないのでしょうね。
答えは簡単で、今の時点では欧米の方が強いからですよね。やはり武力に裏打ちされた外交は有利ですよね。
では、戻しますね。先ずは最も懸念される事態としてイスラエルとの関係が有ります。
アラブ諸国とイスラエルとの関係として有名なのは何と言っても”中東戦争”でしょう。そして、中東戦争と言えばオイルショックですよね。
http://www.stat.go.jp/data/kouri/pdf/7301_13.pdf
グラフで見ると一目瞭然です。リーマンショックから何とか立ち直ろうとしてアメリカやEU等は”量的緩和政策”を取っていますね。そう言えば、中国もジャンジャンとお金(元)を刷っていますよね。
今、世界中に大量の貨幣がジャブジャブとしていますが、それらのお金は企業の設備投資(機械の買い換え等)や個人の消費(お買い物)に回るよりも株式投資や先物(原油や金など)に向かっていますよね。
普通はこういった状態をバブルと言いますが、何故これを景気がよいからマネをしようと言い出すヒトが居るのでしょうね。
では、問題です。リーマンショックで株式投資は危ない(損をした)と考えた人々は株と原油や金などの先物とでは、どちらにお金を掛けるでしょう?
簡単ですよね。少しでもリスクを減らそうと考えれば株式よりも原油や金などの先物取引に比重を掛けますよね。
ではバブルで上昇した原油価格ですが、中東戦争が起こったならどうなるでしょう?
これも簡単ですよね。過去の事例からも分かりますが、確実に原油価格は更に跳ね上がって私達の使うガソリン価格や灯油価格に反映されますよね。
徐々にリーマンショックから立ち直りかけていた所に中東戦争が起これば間違いなく原油価格は以前のオイルショックの時よりも急激に跳ね上がるでしょう。
「民主化のデモなのに何で中東戦争を心配するの?」と疑問に思われる方も居られるかも知れません。そんな方は次のニュースを読んで下さい。
「イスラエルとの平和条約破棄」=新政権主導へ意欲-エジプト・ムスリム同胞団
【カイロ時事】エジプト最大のイスラム原理主義勢力、ムスリム同胞団の最高幹部の一人でカイロ大学教授のラシャド・バイユーミ氏は2日までに、ムバラク大統領退陣後の政権で主導権を握ることに強い意欲を示し、エジプトが1979年にイスラエルと締結した平和条約を破棄するほか、米国の援助拒否、シャリア(イスラム法)導入など、政策の抜本的修正を目指す意向を表明した。バイユーミ氏は同胞団内で最高指導者に次ぐ幹部3人の1人。時事通信のインタビューに対し、同胞団の一致した見解として明らかにした。
欧米諸国は親米ムバラク政権の退陣後のイスラム勢力台頭を懸念しており、バイユーミ氏の発言は欧米側を一層警戒させる材料になりそうだ。
同氏は「最高憲法裁判所長官と協議し、暫定政権を設け、民主選挙を容認する憲法改正などを経た後、大統領選や議会選に候補を立てる」と言明。改憲については、大統領再選回数の制限のほか、宗教政党容認、シャリアに基づく犯罪処罰規則の導入を求める考えを示した。
さらに、イスラエルとの平和条約を「平和的な条約ではなく、エジプトにとって降伏条約だ」と批判。「新政権ではパレスチナ問題の解決が最重要外交課題になる」と語った。
米政府の巨額の対エジプト援助に関しては「米国は中東諸国を破壊する敵だ。援助を受ければ米国の意向に従う必要がある」とし、新政権入りすれば援助を拒否する姿勢を明確にした。ムスリム同胞団を弾圧してきたムバラク大統領については、退陣後に「不正蓄財や政治犯弾圧、デモ参加者殺害などの犯罪行為での訴追を求める」と述べた。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011020200547
この”イスラエルとの平和条約破棄”というニュースを見て、それでも「そんなに簡単には戦争にならないよ」と考えられるヒトは居ないでしょう。
このエジプト等のデモの一番やっかいな所は”自由や民主主義を旗印にしている欧米(偽善ですが一応、建前だけは…)”がデモ鎮圧に出れない事なのです。
今までのエジプトのムバラク政権は親米路線でしたが、民主化デモの後のエジプトはイスラム原理主義の政権で欧米と敵対関係になる可能性が高いから厄介なのです。
欧米の考え方は2つ有ると思われます。それは、「今すぐ介入するか、後で介入するか」です。
もう少し詳しく考えてみましょう。
・今すぐに介入する
これは、デモを鎮圧するという事です。そして、親米路線のエジプトを守るという事です。
口実が無ければ介入出来ませんが、例えば「一般民衆が犠牲になって殺されている」といった誰もが「それじゃ~仕方ないね」といって建前上(本音は別にあっても)は支持する環境が整った場合です。
これなら欧米も正義の味方を演じられるしエジプトも親米路線のままなので欧米の世論は歓迎するでしょう。
また、アラブ諸国も「アラブの一般民衆を助けてくれたんだから」と大きな反対はしないでしょう。
・後で介入する
これは、エジプトが民主化して中東戦争が勃発してから介入するという事です。そして、武力と援助を誇示して第二のムバラク政権を誕生させるという事です。
この方法だと時間が掛かり、今までの援助もムダになります。またアラブ諸国との関係が一時的にでも険悪になる事も予想されます。
欧米(特にアメリカ)が、もう一度長い時間を待つことに耐えられるかどうかと問われれば、私は無理だと思います。
そろそろアメリカのオバマ大統領も決断を迫られる時期に来ているでしょう。そして、日本も戦費負担は確実にアメリカが要求してくると思われます。
では、待つことが苦手なアメリカが何をするかと考えてみましょう。
「介入には口実が必要」→「今の所は口実が見つからない」→「なら、口実を作ってしまえ!」 となるように思っています。
つまり、中国共産党と同じやり方ですね。所謂”自作自演”をし始めると考えています。それをメディアを使って大々的に宣伝してアメリカの介入の口実にするでしょう。
イスラエルの存在と同様に大きな問題なのがスエズ運河です。此処をイスラム原理主義勢力に押さえられてしまえば法外な通行料を取られる事や使えなくなって海運に支障が出る事も予想されます。
スエズ運河をイスラム原理主義勢力に押さえられてしまえば欧米(特にヨーロッパ)は経済に深刻なダメージを受けます。
欧米は何が何でもエジプトをイスラム原理主義勢力には渡したくないというのが本音です。
此処で早々に日本が「○○勢力の方を応援します」と言ってしまえば最悪の事態としてアラブ全体を敵に回すことになります。
アラブを敵に回して石油が手に入ると考える事は出来ません。今は”何もしない、何も言わない”事が一番の得策なのです。
そう言えば、過去にアラブの問題では麻生総理がパレスチナ問題でアラブからもイスラエルからもアメリカからも歓迎されましたよね。
私も「え、そんな紛争地帯で商売の話?」と最初はビックリしましたが、今でも麻生総理の事を待っている国は多いでしょうね。
http://www.kantei.go.jp/jp/asophoto/2008/10/22wahei.html
写真でも分かりますが、イスラエルとパレスチナ双方の重職の方が揃って笑顔で表敬訪問する等という事はアメリカでさえ出来ない事なのです。
世界一の政治家に私は、もう一度総理大臣になって欲しいと思っています。
by ヒロ
僕が僕であるために…