民間事故調、政府の危機管理を批判
日本が戦後最大の危機に瀕したあの日、政府の中枢で何があったのでしょうか。東京電力、福島第一原発の事故の検証を進めてきた民間の事故調査委員会が28日、400ページに及ぶ報告書を公表し、原発に関する従来の危機管理のあり方を厳しく批判しました。
「(菅前首相は)国家のトップとしての戦略や覚悟が希薄だったのでは」(民間原発事故調の会見)
「安全神話による自縄自縛状態が発生していたということでありました」(民間原発事故調の会見)
福島第一原発で起こった事故の検証を進めてきた民間の事故調査委員会は、28日午後、400ページに及ぶ報告書を公表しました。
去年3月の事故直後に政府中枢で何があったのでしょうか。日米の政府関係者らおよそ300人を対象に実施した聞き取り結果から、その実態が浮き彫りとなりました。
「東京でも避難が必要になる『悪魔の連鎖』が起きるおそれがあると思った」(枝野経産大臣〔当時の官房長官!M!K
聞き取りにこう話したのは、当時の官房長官、枝野経産大臣です。報告書によりますと、事故の3日後の去年3月14日には福島第一原発の吉田昌郎所長(当時)から「炉心溶融が進み、燃料が溶け落ちる可能性が高まった」との情報が当時の細野総理補佐官に伝えられ、官邸や専門家の間に強い危機感が広がったといいます。
一方でたびたび問題が指摘されてきた放射性物質の拡散を予測するシステム「SPEEDI」については、菅前総理大臣ら事故対応の中心となっていた政治家が「事故から数日経ち、マスコミから指摘されるまでその存在すら知らなかった」と証言していました。
さらに民間事故調は、報告書で「SPEEDI」は原発を立地する際に住民の安心を買うための「見せ玉」にすぎなかったと厳しく批判しました。莫大な予算をかけて有事に備えたはずのシステムが、まったく機能していなかったことが改めて浮き彫りとなった形です。
そして時の総理大臣、菅前総理について報告書はこう指摘しています。
「菅総理が個別の事故管理にのめり込み、全体の危機管理に十分注意を向けることがおろそかになったことは否めない。『原発に代替バッテリーが必要』と判明した際に、総理が自分の携帯を取り出し、大きさや重さを担当者に質問している状況を見て、同席者の一人は『そんな細かいことを聞くのは 国としてどうなのかとぞっとした』と述べている」(報告書)
東電や保安院を信じられなくなった官邸側が過剰に介入する結果となり、民間事故調は「統合対策本部ができるまでの官邸の対応は、無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていた」としました。
福島第一原発の事故調査についてはさまざまな見解がありますが、JNNが去年11月に行った取材に対して菅前総理はこう話していました。
「事業者である東電自身もですね、当事者としてそういう想定をしなかった、準備をしなかったことに大きな責任がある、こう思っています。残念ながら。今回の事故に関しては原子力安全・保安院からですね『こうやるべきじゃないか、ああやるべきじゃないか』と積極的な形で具申されたことがほとんどありませんでした。私の執務室が相談をし判断をする場所にもなった。これは私の立場からすれば、他の機能がきちっと機能していればそこまで直接的にやる必要はなかったでしょうけれども」(菅直人前首相〔去年11月〕)
なお、今回の調査では事業者である東京電力の幹部が聞き取り調査を拒否していることから、報告書は「さらなる検証は政府、国会の事故調査委員会にバトンタッチせざるを得ない」と結論づけています。(28日17:08)
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