東京電力福島第1原子力発電所事故による放射能汚染を受け、つくば市の母親らの団体が27日、県との意見交換会を市内で開いた。母親らは「内部被ばくを含む子供の健康調査を」と訴えたが、県側は「現段階では必要なレベルではない」と回答。県の放射線アドバイザー派遣事業を活用した県内初の意見交換だったが、双方の温度差が浮き彫りになった。県は今後、要望があれば各地へ出向くとしている。
主催したのは「放射能汚染から子どもを守ろう@つくば」(皆川幸枝代表)。会場の春日交流センターには同市や竜ケ崎市などから乳幼児を抱いた母親を中心に約40人が集まった。放射線アドバイザーの田内広茨城大教授が講演。事故による年間被ばく線量について「普通の生活をする県民で1ミリシーベルトを超える人はいない」と述べ、発がんの危険性を問う質問には「リスクはゼロではない」と語った。
県の柴田隆之健康危機管理対策室長補佐は「健康調査をするレベルではない。必要であれば、国が統一的な基準を作って実施すべきだ」と説明した。
参加した女性は「子供は200%の安心を求めている。影響を過小評価しているのではないか」と発言。別の女性は「身内(子供)の甲状腺に多数ののう胞が出来た。医師から『年齢的にあってはならない、半年後に検査を』と言われた」と不安を募らせた。皆川代表は「健康調査は県が対策に積極的というイメージを出すためにもなる」と迫った。
常総生協の大石光伸副理事長は「事故発生直後、母乳しか飲めない乳児が体内被ばくをしている。感受性の強い子供を追跡調査しないとまずい」と指摘。「1ミリシーベルト以下が安全だとは誰も言っていない。線量を平均化せず、極大化している所を探すべきだ」と強調した。
健康調査を巡っては「@つくば」を含む48団体が昨年11月、要望書を橋本昌知事に提出、県議会保健福祉委員会も翌12月に、県に要請した。その後、県は宮城、岩手県と連携し、国に健康調査を求めている。【安味伸一】
毎日新聞 2012年2月28日 地方版