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社説:首相の沖縄訪問 「辺野古が唯一」は無策

 野田佳彦首相が就任後初めて沖縄県を訪問し、仲井真弘多同県知事と会談したが、米軍普天間飛行場の移設問題の前進はなかった。

 首相は、「普天間を固定化させない」と強調したうえで、「辺野古移設が唯一、有効な方法」と述べ、同県名護市辺野古への移設に理解を求めた。知事は「辺野古は時間がかかる。県外移設を検討、実現してほしい」と主張、かみ合わなかった。

 首相は、民主党政権下の普天間をめぐる迷走や前沖縄防衛局長の不適切発言を謝罪し、在沖縄米海兵隊のグアム移転と米軍嘉手納基地以南の5施設・区域返還を普天間移設から切り離して先行実施する方針や、沖縄振興策にも言及した。負担軽減や振興策の実施で沖縄の信頼回復を図り、沖縄が辺野古案を受け入れる環境整備としたい考えのようだ。

 しかし、事態が動く気配はない。知事は、沖縄振興予算の拡充を評価する一方で、普天間問題では「(県外移設の)主張を変えるつもりはない」と語った。辺野古案が困難である現実を、首相は直視すべきだ。

 辺野古移設に反対する沖縄の政治状況や知事発言を踏まえれば、辺野古案に固執すればするほど、普天間の固定化回避という首相の約束が実現不可能になるのは明らかだ。

 まさか、辺野古案を掲げ続け、普天間の恒久化を表明しない限り、普天間を使用し続けても固定化でない、と主張するつもりではあるまい。そこは首相の誠意を信じたい。

 辺野古移設に必要な公有水面埋め立て申請を知事が許可しない、あるいは、政府が申請もできない状況に至るなど、辺野古案がストップしたまま普天間を継続使用するなら、それは事実上の固定化である。

 これを避けるには、辺野古案の見直しを検討し、米側に提起するしかない。辺野古案を「唯一」とする姿勢のままでは、事態の進展と普天間の固定化回避は期待できない。

 また、首相は、移設先がどこになるにせよ、実現までの普天間周辺住民の危険性除去・軽減対策が必要であることを忘れてはならない。

 普天間移設と海兵隊グアム移転などの切り離しによって、普天間移設の実現には、これまで見込んでいた以上の年月がかかることが予想される。

 現状では、その間、「世界一危険な基地」の周辺住民は引き続き、人命にかかわる危険と、騒音などの生活被害にさらされることになる。

 万一、普天間に近接する沖縄国際大学へのヘリ墜落(04年)のような重大事故が再び起きれば、日米安保体制の円滑な運営や、首相が強調する「抑止力の維持」にも大きな影響を及ぼす。普天間機能の当面の分散移転など対策を検討すべきだ。

毎日新聞 2012年2月28日 2時32分

 

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