エネルギー改革のノド元に刺さった棘 「東電国有化」という茶番

2012年02月28日(火) 町田 徹
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 というのは、東電の社債はすべて担保が付いており、元本がきちんと償還される仕組みになっているからだ。

 法的整理を行った日本航空(JAL)で運行ダイヤが守られていた前例を見れば、法的整理の期間中、電力の供給が維持されることも理解できるはずだ。

 最後に、法的整理は国民負担を何兆円も減らすメリットもある。昨年12月末のバランスシートによると、東電には9800億円弱の純資産と、使用済核燃料再処理等引当金など所要の手続きを踏めば福島原発事故の処理に使える可能性がある引当金が総額3兆7300億円程度残っている。

 加えて、金融機関に対して債権カットを要求できる長・短借入金も3兆8300億円存在する。

 つまり、最大で、これらの合計の8兆5400円に相当する分だけ、国民負担を軽減できることになる。

 もちろん、福島原発事故の被害は甚大で、これですべての賠償や除染を賄えるとは思わない。が、東電や株主、金融機関に身銭を切らせないまま、政府が支援し、そのツケをすべてを国民に回すという「国有化」は、許される行為ではない。

 枝野大臣は、口先だけで勇ましいことを言うのはやめて、淡々と法的処理を進めるべきだ。

 そして、もし、野田佳彦首相が政権の維持に成功して、あなたがもうしばらく、大臣の椅子にとどまるのなら、この問題で何かを決断して、これ以上の東電支援を行うという間違いさえ犯さなければ、よい。そうすれば、資金繰りからみて、1~2年の間に、東電に残された道は、破たん処理だけになるはずである。

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