ところが、枝野大臣は、こんな賠償の遅さを問題とするどころか、逆に、2月13日に6900億円の追加支援を決定した。これほど被災者や国民を無視した、東電に手厚い支援策はない。
国民感情からすれば、このうえ、国有化など容認できるわけがない。
加えて、何よりも問題なのは、政府によるバックアップの代償だ。政府は、事故処理の費用対効果に無頓着で、除染費用などで大盤振る舞いを進めている。かかった費用は東電に請求する仕組みになっているからだ。肝心の東電も、値上げで資金を回収すればよいと考えているためか、そうしたツケ回しに表立った抵抗をしていない。こうしたことは、これまでに本コラムで何度か言及しているのでこれ以上の言及は控えたい。ただ、重荷を、被災者を含む国民に転嫁する話であることだけは、ここで再度、指摘しておきたい。
本来、こうした理不尽な国民への重荷のツケ回しは、法的整理など、資本主義の原則に従った債務超過会社の破たん処理を断行すれば、おのずから歯止めが効く問題だ。
最終的に、公的資金を用いた資本注入が必要になる可能性がゼロというわけではないが、枝野大臣が主張するように、破たん処理もしないで、いきなり公的資金を投入するのは、手順が間違っている。下ごしらえもせずに料理をするようなものだ。
仮に、破たん処理をせずに、公的資金を投入すると、その資金が、本来の趣旨に沿って賠償に充当される保証はない。これまでだって賠償のペースは呆れるほど遅いのだ。おカネに色はついていない。浮いたキャッシュフローが資金繰りに使われたり、金融機関の融資回収に転用されるかもしれないのだ。
そして、いざ、破たん処理となった時には、その公的資金(事実上の血税)が、自動的に紙屑になってしまう。
公的資金による資本注入は、東電が過去に地域独占企業として溜め込んだ身銭や、銀行融資、株主負担などによって、債務整理を進めて再スタートする新会社を身軽にしたうえで、再スタートに必要な資本が民間から集まらなかった時に初めて検討すればよい問題である。
東電の場合、発電所をすべて売却したとしても、送配電事業の地域独占企業として再スタートできる公算が大きく、高くて安定的な収益性が見込まれるため、民間からの新会社への出資が集まらないとは考えにくい。つまり、資本主義の原則通りやれば、公的資金による資本注入がいらない可能性が小さくない。
法的整理をすれば、社債市場が混乱するとか、電力の安定供給が難しいといった議論もよくなされているが、これらはいずれも真実と言えない。
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