エネルギー改革のノド元に刺さった棘 「東電国有化」という茶番

2012年02月28日(火) 町田 徹
upperline

 にもかかわらず、枝野大臣が威勢の良い発言をしたため、新聞とテレビは、増資を巡る東電の内情を確認することもなく、あたかも政府と東電の間で激しい攻防が繰り広げられているかのように報道したのだろう。

 報道を真に受けて、大物財界人が口角泡を飛ばしてそれぞれの応援演説をしたのは気の毒だった。

 将来の税金投入を懸念する財務省が東電、メガバンクと手を結んで経済産業省のけん制に動いたのは事実のようだが、それは過剰反応で、記事として報じられたことも、枝野大臣の発言に踊らされたに過ぎない。

 過去1年を振り返ってみても、政府や銀行の東電擁護は目に余る。

 発端は、昨年3月。経済産業省、メガバンク、東電から、歯止めのない停電を招くと迫られた金融庁が、昨年度末に向けた東電の資金繰りをつけるため、メガバンクに対して国による事実上の債務保証をほのめかしたことだ。はっきり言って、金融庁の対応は「資本主義の番人」の立場を自己否定する失態だ。

 次いで5月にかけて、政府は、3月の失策を覆い隠すため、監査法人の口を封じ、東電の事実上の債務超過状態を隠し通そうとした。決算発表を乗り切らせる狙いもあり、この段階で、本格的な公的支援の導入を繰り返し公約する挙に出たのだ。

 そして、昨年夏、急きょ根拠法を可決・成立させて、秋に設置したのが、あの原子力損害賠償支援機構である。

 当時は、経済産業省の政務3役にさえ、同機構の設置を失策と認めて、1年程度の間に抜本的な見直しをすると確約する向きもあった。が、そんな約束は、菅直人前政権の崩壊とともに、官僚たちによって葬られた。

 昨年11月になると、賠償支援機構は自らの存在意義を示すかのように、東電支援の第1弾を断行した。

 ちなみに、この第1回支援で、約8900億円の資金が交付されたのに、機構と東電によると、実際に東電が今年1月までに被災者に支払った賠償金は4分の1にも満たない2132億円にとどまっている。 

previous page
5
nextpage



underline
アクセスランキング
昨日のランキング
直近1時間のランキング
編集部お薦め記事
最新記事