各社の決算発表によると、東電の2012年3月期は、最終赤字がこれまでの予測より950億円拡大して6950億円に膨らむ見通しだ。本コラムのアップ前(27日)に、2012年3月期の業績予想を発表する見通しの関西電も、過去最悪の2900億円前後の最終赤字が見込まれているという。
すでに確定した今年度の第1~3四半期(2011年4~12月期)の決算では、全国10社のうち、四国電と沖縄電を除く電力8社が最終赤字を記録した。
家計や企業にとって、あるいは経済全体にとって、深刻なのは、こうした赤字が値上げに直結しかねないことである。
東電に続いて、4月からの新年度には、各社が相次いで大幅な電気料金の引き上げに踏み切ることが確実視されている。
国富の流失も目を覆いたくなる状況だ。昨年は、貿易収支が31年ぶりの赤字に転落した。事態の一段の悪化を象徴するかのように、今年1月も、貿易収支は単月で過去最大の赤字を記録した。欧州危機を主因とした輸出の減速の一方で、化石燃料の購入を主体とした輸入が増えているためだ。
イランがホルムズ海峡の封鎖に踏み切れば、原油の確保が難しくなる懸念もある。
こうした様々な問題を打開するために原発の運転再開を認めるのか、それとも原発封印の代償として様々な問題を甘受するのか、 エネルギー戦略を巡る国民的な議論が必要な段階を迎えたことは、もはや誰の目にも明らかだろう。
しかし、筆者も含めて、そうした議論に素直に応じる気にはなれない問題が残っていることも、また事実だ。のど元に刺さった棘のような問題が、資本主義の原則を無視した政府の「東電の国有化論議」である。政府のあまりにも露骨な東電擁護姿勢は、我々国民に政府への不信感を抱かせずにおかないのだ。
ここからは、その問題を検証しよう。そもそも「東電の国有化」論議は、福島原発事故の発生直後から、株式市場で東電株の売買材料として取り沙汰されていた。その後、折に触れて、話題にのぼった問題だ。
今回、改めて新聞やテレビで大きく扱われることになったきっかけは、枝野大臣が2月13日に、西沢俊夫東電社長を呼び、国による東電への資本注入について、「十分な議決権が伴わない計画を認定するつもりはない」と申し渡したことにある。
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