そして、厳しい寒波に襲われた今月(2月)1日、ついに中部電力から電力融通を仰ぐ緊急事態に追い込まれた。融通量は最大30万キロワットだった。
翌2日も、綱渡りは続き、午後5時に最大電力使用率が94.7%(90%以上は「警戒水準」)に上昇、今度は北海道電力から最大28万キロワットの融通を受ける有り様だった。
綱渡りは、決して東北電だけの問題ではない。世界最悪の事故を起こした東電福島第1原発の影響で、全国で定期点検に入った原発の再稼働が認められないため、原発依存度の高かった電力会社ほど深刻な事態に直面している。
例えば、東北電が初の中部電からの支援を仰いだ2月1日には、中部から融通を受けたところが他にも2社あった。関西電力が前日より20万キロワット多い最大60万キロワットの融通を、九州電力も最大40万キロワットの融通を、それぞれ受けている。
加えて、2月3日。この冬最も危うい状況が全国的に勃発した。「警戒水準」とされる最大電力使用率が90%以上の状態に、全国の10電力のうち、東北電、中部電、北陸電、関西電、四国電、九州電の6社が陥ったのだ。
寒波の襲来に加えて、燃料を送る配管の凍結のため、九州電の新大分発電所の火力発電設備が13基すべて緊急停止したことが原因だった。九州電への緊急融通は、関西電、東電など6社の合計で240万キロワットにのぼった。
付言すれば、火力発電では、北陸電の七尾大田火力発電所でも15日、計器周辺で水漏れが見つかり、補修のため、緊急停止するトラブルが発生した。北陸電は、自社の供給力を確保するため、関西電への融通をとりやめざるを得なかった。
企業でも、家庭でも、ユーザー側が真摯な節電努力を続けているのは間違いない。
しかし、大分、七尾の両火力発電所のトラブルは、そうした努力だけでは、突発的な全国規模の停電を防ぎきれないリスクが存在していることを浮き彫りにした。
原発停止の代替措置としてフル稼働させている火力発電の燃料費の増加と、節電要請に伴う売り上げの減少が、電力各社の経営を直撃していることも憂慮すべき問題だ。
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