兵庫ゆかりの洋画家小出楢重の作品で、所在不明となっていた「馬鈴薯のある静物」が播磨地域の旧家で見つかり、県立美術館(神戸市中央区)で保管されている。小出作品に詳しい同館の河崎晃一館長補佐(60)は「早世し、作品数が少ない中で価値ある発見」と話す。
同作品は縦45・5センチ、横53・0センチ。二科展で新人賞に当たる樗牛賞を受けた代表作「Nの家族」と同じ1919(大正8)年に描かれた。自作を列挙した小出の自筆メモにタイトルはあるが、所在不明になっていた。
2009年夏、播磨地域の旧家が家財整理で出てきたとして、書画保存修復所を営む西海美晴さん(63)=加古川市=に鑑定を依頼。西海さんが小出の署名と作品名を見つけて同館に持ち込み、小出作品と確認された。
小出は親友がいた高砂市を何度か訪れ、風景画を描いており、播磨ともゆかりはある。とはいえ、なぜ小出の作品が旧家にあったか経緯は分からない。
作品は絵の具がはげ落ちた箇所もあり、修復が必要な状態。傷みが進まないように同館で保管している。河崎館長補佐は「できればここで展示して多くの人に見てもらいたい」と話す。
「貴重な作品を救えて良かった」と西海さん。旧家は「個人では管理しきれない」として、同館に預託する意向という。
小出の孫で、大阪芸術大短大部の小出龍太郎教授(59)は「1919年当時の粘っこい油絵といった画風が現れている。楢重研究にとって大変ありがたい発見で、遺族としても感謝したい」と喜んでいる。(黒田恵子)
【小出楢重】(1887〜1931年) 大阪市出身。東京美術学校(現東京芸術大)を卒業。渡仏して帰国後、大阪に信濃橋洋画研究所を開き、関西洋画界の発展に努めた。26年に芦屋市に転居してアトリエを構え、裸婦像を中心に佳作を残した。
(2012/02/28 08:41)
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