4月にすべての原発が止まると、夏に向け電力不安が高まる。
東京電力は大口需要家へ値上げをする構えだ。
体力が蝕(むしば)まれていくなか、自力でコスト抑制に動く企業もある。
競争力維持へ奮闘する企業を追った。
2月2日、トヨタ自動車(証券コード7203)傘下のセントラル自動車の宮城工場(宮城県大衡村)でガスを燃料にしたコージェネレーションシステムの火入れ式が行われた。出力は7800キロワットで、工場で使用する電力の約9割をまかなう。葛原徹社長は「昨年は電力が不足していた。今後は大変やりやすくなる」と語る。トヨタグループは大規模太陽光発電所(メガソーラー)の設置も検討している。実現すれば電力を自給するだけでなく、緊急時には近隣のトヨタ関連の工場や大衡村の施設にも電力を融通できる。
電力不安が常態化する中、電力の新たな調達源としてコージェネシステムのような自家発電装置を活用しようとする企業が相次いでいる。特に電力消費量が大きい素材メーカーで顕著だ。日新製鋼(5407)は市川製造所(千葉県市川市)や堺製造所(堺市)で自家発電装置の設置を検討している。東邦チタニウム(5727)はすでに自家発電装置を保有し、製造工程の一部で使っているが、電力不足が深刻になるようであれば増設も検討する。
東京ガス(9531)によると、ガスを燃料にした発電装置の設置件数は前年を3割上回る水準で推移している。同社の菅原一浩マーケティンググループ課長は「工場を24時間稼働する必要がある食品や化学メーカーなどで電力の調達先を分散するニーズが高まった」と話している。自衛のため電力の自給自足を目指す企業が増えているのだ。
「今年の夏は出せるだけ出せるようにしておく必要がある」。東亜石油(5008)の白木郁取締役は危機感を募らせる。同社は自社の製油所の精製過程で発生するガスを燃料にした発電所を運営、使用する電気をほぼまかなっている。最大発電量は約200メガワット。東日本大震災の発生直後の昨年3月から5月まで東京電力に電力を最大限、融通した実績もある。原発停止の影響で昨年の夏以上に電力需給が逼迫すればフル稼働させる必要がある。もしそのときに故障でもしたら生産活動が滞ってしまう。そのため、電力供給にまだ余裕のある4月と5月に修理しておく考えだ。