東京電力福島第1原発事故を調査してき民間事故調の報告書は、首相官邸サイドが東電や原子力安全委員会、原子力安全・保安院への不信を強め、独自に情報収集して対策を指示し「不信と介入のスパイラル」(報告書)に陥る様子を浮き彫りにした。
昨年3月11日の夜、菅直人首相(当時)は官邸5階の執務室で、電源車の手配状況を逐一報告するよう指示。秘書官らが「後は警察にやらせますから」と言っても、「いいから俺に報告しろ」と取り合わなかった。
「必要なバッテリーの大きさは? 縦横何メートル? 重さは? ということはヘリコプターで運べるのか?」。代替のバッテリーが必要と判明した際には、自らの携帯電話で担当者に質問しメモを取った。同席者は「首相がそんな細かいことを聞くというのは、国としてどうなのかとぞっとした」。
首相は12日に1号機で水素爆発が起きた後も携帯で情報収集。その後も知人らを次々と内閣官房参与に任命した。枝野幸男官房長官(同)は「やめた方がいいですよと止めていました」と証言。ある官邸スタッフも「何の責任も権限もない、専門知識だって疑わしい人たちが密室の中での決定に関与するのは個人的には問題だと思う」と批判している。
首相らが、政府組織の正規ラインの情報、意見以外を求めたのは、東電や安全委などの専門家の見通しが誤っていたことがきっかけだった。12日未明、第1原発に向かうヘリで、首相は「水素爆発は起こるのか」と質問し、安全委の班目春樹委員長は「爆発はしない」と答えたが、数時間後に爆発が起きた。海江田万里経産相(同)は政府などの専門家について「この人たちの言うことも疑ってかからなければいけないな」と思ったと証言している。
毎日新聞 2012年2月28日 6時41分
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